ハジメのエピローグ

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「ホノも…夜に友達と花火やったりしたー?」

 モヤモヤを一旦隅に置いて、俺はホノカに聞いた。

「あ、ハイ。一度だけ。中学の時に…仲いい子たちと近くの公園で」

「ふぅん。今思うと、女の子達で夜出歩くのって危ねぇよな」

「うん、でもその時はね、縁日だったから皆外出てた。21時までに帰ればって許可貰ってて。
 それに、女子だけじゃなかっ…あっ」

 ホノカはしまったという顔をした。俺を横目で見て苦笑いをする。

「ほー…それで?」

「ハジメさん…花火やりましょ花火。ねっ」

 袋をガサガサ言わせながら花火を取り出すホノカ。話は無かったことにしたいらしいが、

「いーよぉ。花火しながらでも話は出来るもんなー?」

 俺が飄々とそう言うと、ホノカは観念した顔をして、

「どこから話したらいいのか…何を言っても、ハジメさん怒る気がする」

 と呟いた。

「怒んねーし。大人だもん(笑)」

 花火に付いてた小さなロウソクに手持ちのライターで火を灯して、斜めに傾けて溶けた蝋を一滴垂らしてそこに素早くロウソクを立てる。

 ホノカは「ほんとうに?」と小さく笑いながら、俺と一緒に一本目の花火を物色した。

 花火の先端をロウソクの炎にかざすと、数秒してシュバッと眩しい閃光を放ってシューッと火花が少し弧を描いた。

 ホノカが持っている花火の先端に火を分けてやると、同じ様に音を立てて、こちらはバチバチッと火花が飛び散った。

「わあっ」

 火花の灯りで照らされたホノカの横顔がキレイ、見惚れつつ、さっきの話の結末も気になる俺。

「話すのが難しいなら…イエスノーなら答えられる?」

 俺の言葉にホノカはしばらく考え込んで…やがて、こくりと頷いた。

「へへ。さーて、何を聞こうかなぁ」

「ちょっ、あんまり困るような質問はやめて?(苦笑)」

 多分すごいイジワルな顔をしたんだろう、ホノカが一瞬躊躇したが、逃さねぇとばかりに空いてる方の手でホノカと手を繋いで、意外に持ちのいい花火の閃光を眺めた。





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