ハジメのエピローグ
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ホノカの溢れそうな涙と、少し詰まった声。
今思えばそれは、酒の力がさせた事、それから、いつの頃からか知らないけど、ホノカがずっと俺に内緒で抱えていたんだって、でもその時の俺はすっかり動揺した。
ホノカにどこまで話せばいい? ってか、誰がホノカに話した? 真っ先に勇実とタツミくんを疑ったけど、そうペラペラと喋る二人じゃない事は俺だって知ってる。
ホノカを見つめたまま言いあぐねていると、ホノカは人差し指の付け根で目尻をそっと撫でて、
「聞いたんじゃないんです、私が、ずっとそうなんだろうと思ってて」
ひとつ間を置いて、続けた。
「ハジメさん、気付いてないでしょ?
ハジメさんがイッサちゃんの話をする時とか考える時、いつもと違う顔するの。
思い出し笑いして…すごく穏やかな顔になるの。
前にハジメさんが、イッサちゃんの事好きだったって話してくれた時とおんなじ顔をする。
ただの片想いじゃなくて、想い合ってたんだなと…
…責めてるんじゃないです、ただ、ハジメさんの口から、ほんとうの事を知りたい」
ここまでホノカは俺の目を真っ直ぐに見て、その後も俺から目を逸らさなかったんだけど、飲み過ぎて睡魔が来たのか今にもまぶたが閉じそうだった。
「ホノ。一度しか言わねぇぞ」
横並びに飲んでた俺達、ホノカの二の腕を背中から包んでグッと俺の方に抱き寄せた。
わっとホノカが小さく叫んで、倒れそうになるのを支えた右手が俺の太ももに、その熱がじんわりと伝わる。
ホノカの頭に頬をもたげながら、俺は言った。
「付き合ってた。
俺から想いを伝えて。
期間は、たったひと月。
理由は…ナイショな。
ずっと…あの時の想いを越えられないと思ってた…
でもホノが…越えさせてくれたんだぞ?
ホノが誰よりも好きだって、分かれよ…」
人目がある店内で何を言っちゃってんだか、今思い出しても顔から火が出そう(苦笑) でもこの時はホノカに真摯に伝えたくて、必死だったんだよな。
ホノカはただひと言、
「ウン」
と言って、そのまま身体を俺に預けて両目を閉じて、しばらくしてから寝息を立て始めた。
ウンと言ったホノカの声が俺の骨の至る所に響いて、なんだか感極まっちゃって、心地いい痺れを残した。
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