ハジメのエピローグ

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「おーやってるやってる」

 昼間素通りしたビーチまで来ると、高校生だか大学生だかの若い男子達が楽しそうに花火をしていた。

 砂浜じゃなくて、防波堤になっている少し幅広のコンクリの上ではしゃいでいた。

 俺の若い時とは違うのかな、今はどこの海でもビーチ内での花火は禁止されてるみたい。

 さっきホノカとビーチの案内板を見てて、たとえビーチ外でも夜10時以降の花火は禁止と書かれていた。そりゃそうだ、近所迷惑だもん。

「若者のジャマしたらあれだな、もう少し離れるか。あっちのテトラポッドの方行くか?」

「ふっ。ハジメさんもまだ若いよ?」

「そーお?」

「(笑)」

 ホノカが声なき声で笑う。ほんと、そう言ってくれるのホノカだけだよな。

 勇実なんて未だにおじいちゃん扱いしやがるし。

「ハジメちゃん疲れた疲れたって私にマッサージばっかさせてー、ほんとおじいちゃんなんだから。
 今にホノちゃんにあきられるよ?」

 時々、開店前にマッサージ屋に寄ってプロの勇実にほぐして貰うんだけど、これがまあ、アイツ超うまいのよ。

 気持ちよすぎてうつらうつらした所でこないだそんな事を言われて、相変わらずサラリとキツイ事言う、全く冗談に聞こえなかった。

 それをぼんやりと思い返していると、

「あっ」

 ホノカが俺の顔を見て声を上げる。

「ウン? 何?」

「イッサちゃんの事、何か考えてる」

「エ」

 俺はびっくりして、ホノカの目を見た。

 ホノカは…目を細めて微笑んでいた。



 ホノカには…言ってある。

 昔俺が勇実を好きだった事。

 それから…少しの間だけ付き合っていた事も。





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