ハジメのエピローグ
10/28ページ
俺が損ねてしまったホノカのゴキゲンは、ホテルの夕飯ですっかりよくなった。
「ホノさーん…お許し頂けたのかなぁ?」
「ふっ。しょうがないから許してあげます」
「はーよかった。うめぇな、コレ」
「ふっ。ハイ」
ホノカが少し奮発した宿泊プランで予約してくれて、豪勢なフレンチディナー。
お酒は食前酒にシャンパンを一杯頂いただけ。俺もホノカもそう簡単には酔わないけど、今日だけはシラフのままでいたかった。
ホノカは知らないけど、俺には計画がある…
「ハジメさん」
「ウン?」
「この後…どうしよう?」
「(笑) そうだなあ。いつもよりメシ、早く終わっちゃったな」
シメのデザートとコーヒーを頂きながら、俺達は笑い合った。
まだ19時にもなってねぇ。夜は始まったばかり。
「あっそうだ」
「ハイ?」
「風も凪いできたし、海岸で花火やらん? 近くにコンビニあったし、買ってこーぜ」
「いーですね。やりましょやりましょ」
俺達は席を立って、手を繋いで会場を後にした。
「あー、ホノ?」
「ハイ?」
「まだ…言ってくれないの?」
コンビニまでの道すがらでホノカに聞く。
そう…俺、まだ、おめでとうって言われてない。その理由は…分かってるんだけれど。
「ふっ…生まれた時間までまだ、1時間以上ある」
「まじかー」
「ふふ…っ」
先月のホノカの誕生日で…ホノカは日付が変わる直前に生まれたって聞いて、その時間になった瞬間に「誕生日おめでとう」と囁いた。
それを俺にもやりたいみたい。さっきから腕時計をチラ見する回数が増えてる(笑)
先月の俺みたいにホノカも、耳元で囁いてくれるのかな。
そうしたら俺、自分を抑えられない気がするんだけど、大丈夫か?(苦笑)
…