ハジメのエピローグ

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 俺が損ねてしまったホノカのゴキゲンは、ホテルの夕飯ですっかりよくなった。

「ホノさーん…お許し頂けたのかなぁ?」

「ふっ。しょうがないから許してあげます」

「はーよかった。うめぇな、コレ」

「ふっ。ハイ」

 ホノカが少し奮発した宿泊プランで予約してくれて、豪勢なフレンチディナー。

 お酒は食前酒にシャンパンを一杯頂いただけ。俺もホノカもそう簡単には酔わないけど、今日だけはシラフのままでいたかった。

 ホノカは知らないけど、俺には計画がある…

「ハジメさん」

「ウン?」

「この後…どうしよう?」

「(笑) そうだなあ。いつもよりメシ、早く終わっちゃったな」

 シメのデザートとコーヒーを頂きながら、俺達は笑い合った。

 まだ19時にもなってねぇ。夜は始まったばかり。

「あっそうだ」

「ハイ?」

「風も凪いできたし、海岸で花火やらん? 近くにコンビニあったし、買ってこーぜ」

「いーですね。やりましょやりましょ」

 俺達は席を立って、手を繋いで会場を後にした。

「あー、ホノ?」

「ハイ?」

「まだ…言ってくれないの?」

 コンビニまでの道すがらでホノカに聞く。

 そう…俺、まだ、おめでとうって言われてない。その理由は…分かってるんだけれど。

「ふっ…生まれた時間までまだ、1時間以上ある」

「まじかー」

「ふふ…っ」

 先月のホノカの誕生日で…ホノカは日付が変わる直前に生まれたって聞いて、その時間になった瞬間に「誕生日おめでとう」と囁いた。

 それを俺にもやりたいみたい。さっきから腕時計をチラ見する回数が増えてる(笑)

 先月の俺みたいにホノカも、耳元で囁いてくれるのかな。

 そうしたら俺、自分を抑えられない気がするんだけど、大丈夫か?(苦笑)





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