ハジメのエピローグ
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「…ン…」
鼻にかかる、ホノカの甘い声。それが俺を煽ってるって分かってるんだか分かってないんだか。
プールの涼しさとホノカの唇の熱が対極して、余計に俺をクラクラさせてる。
ゆっくり唇を離すと、ホノカは閉じてた目をゆっくり開けて、俺とバチっと目が合った途端ふいっと横を向いて、
「見られる」
とボソリと言った。
「誰もいねぇし」
と言いつつ、客は他にはいないかもしれないが、もしかしたらスタッフが点検に回ってくるかも、と思った。
「ホノ、こっち来て」
俺はエアーマットを一旦プールサイドに上げて、そのすぐ傍でプールに身を沈めたままホノカを抱き寄せた。
びっくりするホノカの背中をプールの壁に押しつけて、ホノカの両耳の外側から腕を伸ばして縁を掴んだ。
ちょっと違うかもしんないけど、壁ドンみたいな感じ。
「ヤ、ハジメさん」
「俺が陰になるから、見えないだろ…」
入口からは俺の背中しか見えないはず。
再び唇を求めると、ホノカはそっと俺の頬に手を添えて両目を閉じた。
ちゅっ
ちゅっ
誰もいないのをいいことに、大胆にリップ音を鳴らした。
その動きに合わせて水面がチャプチャプと音を立てるから、また何かイケナイ気持ちになってきた。
「ホノー…?」
「…ハイ…?」
「誰も…来ないな…?」
「ンッ…そう…ですね…」
唇をくっつけながら喋ってるから、お互いの熱い息がかかって、なんか、色々とヤバい。
気持ちが盛り上がると、ホノカのポニーテールの結び目をほどきだす。
これは二人の間の暗黙のルール、というよりは俺の無意識の癖で、それをホノカは許してくれている。
だけどこの時は髪が濡れているから、いつもみたいにスルッとゴムが髪を滑らない。
手間だなと思ってふと手を下ろした時に、俺の指にホノカの水着のストラップの結び目が触れた。
俺の悪魔がこっそり囁いた。
こっちをほどいちゃえば? って。
…