ハジメのエピローグ

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「な、ちょ、ちょっとまってちょっとまって。そんな急な」

「どこがいいかしらねー、時間もないし遠からず近からずよね?
 そうだ、○○町はどう? 海も近いし、ついでにお父さんのお墓参りに行って貰えたら助かるんだけど」

 ホノカが混乱しているのを横目に、お母さんがニコニコしながら俺に言う。

「へえ? 近いんですか、お父さんのお墓」

「うん。そこ、お父さんの生まれた所でね。近藤家のお墓に入れて貰ってるの。
 先月の帆乃夏の誕生日の時に行って手入れしてきたけど、お花枯れてるだろうから、取り替えて貰えるかなぁ」

「いいっすよ。じゃーその近辺で宿を…」

「あらー、今は色々宿泊施設が出来たのねぇ」

 自分のスマホで宿を検索する俺と、それを覗き込みながら楽しそうにしているお母さんを、ホノカは恨めしげに眺めながら、

「もう、何で二人でそんなに楽しそうなんですか。ていうか、お母さん、なんで一人でお墓参り行っちゃうの? 私も連れてってよ」

 呆れたように溜め息をついた。



 でも、俺的にはチャンスが舞い込んできた、と思った。

 先月のホノカの誕生日の時は…

 俺は仕事だったけど、ホノカは花金で翌日休みだったから、仕事帰りに店に寄って貰って、閉店後にささやかなパーティーをして…

 そのまま、店の2階で熱い夜を、もとい一泊して貰った。いらない情報か?(照笑)

 ともかく、彼女にそんな事しかやれてなかったので…お母さんの言うように、彼女の誕生日祝いも兼ねたかったのだ。

「おっ、ここどうかな。プール付きだって。万一天気悪くて海行けなくても楽しめそうだぞ」

 テーブルの対面に座るホノカに身を乗り出して、画面を見せる。

 ホノカも俺の方に身を乗り出して、画面を覗き込んだ。

「あっいいですね。まだ空きもありますね? じゃあ私の方で予約しときます」

「有給の申請も忘れるなよ?」

「ふっ、もちろん」

 そんな俺達の様子を見ながら、お母さんはテーブルの横を素通りして、テレビの前のソファーに腰を沈めて、クスクス笑いながらお茶を飲み始めた。

「仲良しでなにより」





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