ハジメの一歩
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「ハジメちゃん、どこやってほしい? あとやってないの、ハジメちゃんだけだから。サービスしますよ(笑)」
パラソルに戻ってきて、勇実にマッサージを頼む前に、勇実の方から申し出てくれた。
「おー頼むわ。そしたら、肩と、背中と、腰と、脚と、足裏な」
「もう、全部じゃん! おじいちゃんなんだから(笑)
わかりました、ではそちらにうつ伏せになって下さい」
笑いながら営業口調になって、うつ伏せに寝た俺の上にバスタオルをかけて、その上から全身をほぐしだした。
「あああ~っ。気持ちよすぎ~っ。相変わらずうめぇなぁ」
「ふっふっふ。これでごはん食べてますから」
あの頃より格段に腕を上げている勇実。
組んだ手の甲に自分の頬を乗っけて、ついウトウトしてしまう。
ぼんやりとした視界にふと、ホノカとタツミくんの姿が入った。
ラジオの話で盛り上がっているらしい、すごく楽しそう。
ホノカとキタガワが楽しそうに話すのはなんとも思わないのに…
タツミくんとだと、何かモヤモヤした。
キタガワに向ける顔と、タツミくんに向ける顔が、明らかに違う。
ホノカにしてみたら、いつもラジオで聴いている声の主に思わぬ所で繋がって、上気してるんだろう。
頬を少し赤く染めて、はにかみながら話すホノカ。
…そんな顔するなよ。
「ハジメちゃん? 痛い? 眉間にしわ寄ってる」
勇実の言葉にハッとなった。ホノカとタツミくんもこちらを見る。
「え? いや…気持ちよすぎてアクビが出そうだったから、噛み殺してただけ」
「なあんだ。別に、寝ちゃってもいーよ」
「そんなワケにいくか。これ終わったら、帰るだろ?」
ごまかして、俺はホノカ達が見えない方に顔を向けた。
そうする前に、タツミくんが俺とホノカを交互に見てたのが目に入ったけど、俺は知らないフリをした。
…この時の事をのちに、タツミくんがこう言った。
「ハジメさんって…
分かりやすいですね(笑)」
…