ハジメの一歩
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「へぇー…
らしくないことしたねぇ、アイツは」
ヘラヘラとした印象のキタガワにも、そんな一面が。
というよりは、キタガワのホノカに対する気にかけるような態度は、そこから来てるのかぁと妙に納得した。
「そうでしょう?
いっつも、ふざけてて、チョーシに乗って。
まぁでも…たまに男前です。たまに」
俺はぶはっと吹き出した。素直に誉めたらいいのに。
ホノカが違うと言うならそうなんだろう。
でも、俺には…今の話を聞いてなおのこと、ホノカにほんの少し位は、恋心があったんじゃないかと…
そう思った事、ホノカには内緒にしておこう。
「ハジメさん。今の話は内緒ですよ。イッサちゃんにも。タツミさんにも。北川にも」
「キタガワにも? 何で? 内緒も何も、当事者なのに」
「私がハジメさんに話したって事をですよ。
こんな昔話、何で私から話したのかってからかわれそうだから、イヤです」
出逢ってまだ日の浅い俺達が、こんなデリケートな会話をしてるのも、おかしな話だよな。って事だよな。
「…俺もさ、高校の時におふくろ亡くしてるから。親が逝くって、キツいよな。
ホノちゃん、大変だったな。キタガワいてくれて、よかったな」
「あ…ハジメさんも…?
そうだったんですか…ごめんなさい…」
ホノカが哀しそうに瞳を揺らした。そんな顔するな。
「いいって。俺はホラ、もう10年も前だし」
しんみりした雰囲気はスキじゃない。俺はつとめて明るく言った。
「まぁ…今日はお互い、色々とヒミツを暴露したってコトで」
「ふっ。タツミさんのプロポーズの事?」
「シーッ! シーッ!
あ、ホノちゃんが密かにキタガワを男前って思ってた事?」
「ちょ、ちょっと! それチガウ! もうっ…
ハジメさんがイッサちゃんを好きだった事だって!」
「わーっ! それはもういいから、なんか心がえぐられる(苦笑)」
「ハジメさんが変なこと言うから。
もう戻りましょう? イッサちゃん達、こっち見てる」
パラソルの方を見ると、勇実とタツミくんが立ち上がって手を振っていた。
ホノカが手を振り返してそっちへ歩いていくのを、俺は後からついていった。
…