ハジメの一歩

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 一瞬、声が詰まった。

 真っ直ぐ前を向いていたホノカが、ゆっくりと俺を見る。

 俺もホノカを見た。

 勇実が俺を見る時は、おおげさに言えば空の月でも見るように顔を上げていたけど、背の高いホノカはちょっと上目遣いになって、色素の薄い茶色の眼がよく映える。

「…なーんで、分かるのよ」

「ふっ…そんな気がしました」

「…わかりやすい?」

「(笑) …ハイ」

「んーっ、そっか(笑)」

 頭のてっぺんをポリポリ掻いて、俺は苦笑いをした。

 ホノカには…どこまで話せばいいんだろう。

「うん…好きだった…
 もう、ずいぶん前だけどさ」

「そうですか…」

「…吹っ切ってるよ?」

「…ふっ。そうですか」

 ホノカは静かに笑みを浮かべる。付き合っていた事は…言わないでおこう。

「あーあ…アイツ、勇実にプロポーズすんだってさぁ」

「…そうなんですか?」

 ホノカの驚きを含んだ声色に、首の後ろで両手を組んだ俺はハッとなった。

「やべっ…言っちゃった。
 内緒な、内緒」

 少々おおげさに口を横におっ広げて、シーッシーッと人差し指を宛てた。

「ふっ…ふふっ…ハイ(笑)」

 そんな俺の仕草を見て、ホノカは肩を竦めて笑いだした。いつまでも笑っていて、そんなにツボに入ったのか(笑)

「また…共有するヒミツが増えちゃいましたね」

 笑い終えてふーっと息をついたホノカは、また視線を水平線に戻してそう言った。

「はは…そうだな。
 なにとぞ、ご内密に(笑)」

 ホノカがまた笑いだした。前方から潮風が俺達を撫で付けて、まるでヒミツとホノカの笑いをさらっていったようだった。





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