ハジメの一歩

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 俺が海岸に着いてゼーハー言ってる間、タツミくんはパラソルに戻っていった。

 体が鉛のよう、くそー、体力ねぇなぁ。息を整えて、また水平線を見やる。

「あっ。ほんとに黄昏てる」

 また同じ台詞? そう言って俺に近づいてきたのは、ホノカだった。

「ちょっと…ホノちゃんまで(笑)」

「ごめんなさい(笑) イッサちゃんとタツミさんが、そう言うから…」

「アイツらめ。後でキツく絞っとくか」

「ふっ。あ、これ。ハジメさんに持ってってあげてって、おふたりから」

 ホノカがドリンクを差し出してくれた。

「お。サンキュ。ったく、こんなんされたら、絞れねぇじゃん(笑)
 …アイツらは? 休憩中?」

 ゴクゴクと喉を潤しながら、ホノカに聞いた。

「ハイ。イッサちゃんがマッサージしてると思います。
 私もさっきやってもらっちゃって。すごくよかったですよ」

「だろー? アイツ上手いよな。昔、よく練習台にされて…俺も後でやってもらお」

 パラソルの下の勇実とタツミくんを見た。足ツボマッサージをされて、タツミくんがゲラゲラ笑ってる。「ちょっと! じっとしててよ!」って言いながら、勇実も笑っていた。

「…いいなぁ。イッサちゃんとタツミさん」

 ホノカがポツリとつぶやいた。

「ん?
 あぁ。俺のオススメだからな(笑)」

「そうなんですか?(笑)」

「そうだよ(笑)
 大事な…二人だ」

「そうですか」

 しばらくそうしてホノカと海を眺めていた。何も言わない時間も心地よかった。

「ハジメさん」

「…うん?」

 ホノカが、水平線に目線を動かさないまま、静かに言った。



「好きでしたか?



 …イッサちゃんのこと」





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