ハジメの一歩

40/75ページ

前へ 次へ


 でかいと思ってたスイカだったけど、いざ4人で食べてみれば、あっという間にたいらげられた(笑)

 やる事は全て終わったので、あとは各々自由に過ごす事にした。

 とはいえ、荷物番は必要だから、ひとりは必ずパラソルの下。

 まずタツミくんが荷物番を申し出てくれて、勇実はホノカを連れて浅瀬で泳いだり潜ったりしていた。

 俺はトイレに行ったついでに、勇実とホノカの所から少し離れた平らな岩の浅瀬で、ボンヤリ水平線を眺める。

 太陽がキラキラと照りつける水面の所で、ウィンドサーフィンのヨットが何艘か走っているのを見て…

 そういえば昔、いつかやろうって勇実と約束したっけな、と思い出した。

「ハジメちゃん? どーしたの、こんな所でボケッとしちゃって」

「うわ!?」

 急に勇実に話しかけられてビックリする。

「なんだよ、急に。あれ、ホノちゃんと一緒じゃなかったのかよ」

「うん。少しパラソルで休むって。
 ハジメちゃんが黄昏てるから、ますますおじいちゃんに見えて心配になったよ(笑)」

「別に、黄昏ちゃいねぇし。ってオイ。またオマエは、ひでぇことサラッと言うしな。
 …勇実ぃ? 前にアレ、乗ろうって言った事…覚えてる?」

 そう言って俺は、ヨットを指差した。

 勇実はしばらくそちらの方を見つめて…

「…うん。覚えてる。
 ハジメちゃんのその、勇実ぃ、っていうの、久しぶりに聞いた(笑)」

 こっちに顔を向けないまま、ふふっと笑った。

「そうか? しょっちゅう言ってたと思うけど」

「言ってなかったよ。
 ねぇ…ハジメちゃん。ヨットの約束、終わってないからね? いつか、みんなでやろうね」

「うん? …ま、そうだな。みんなで、行こうな」

 昔のあの約束は、二人でって意味だったから、とっくに無効なんだよ。勇実、それ分かってる?

 もし、あの時の俺に少しでも、脅えて泣く勇実を離さない勇気があったら。

 …今でも、付き合っていたのかな?



 ──私、まだ、ハジメちゃんが…っ──



 別れを告げた時、繋ぎ止めようとしてくれた勇実。

 あの時の勇実は、もういない。

 俺は今でも、何かにつけてオマエとの恋愛に結び付けちまうけど。

 オマエは、違うよな?

「勇実ぃ? 今、幸せだろ?」

「…うん。ハジメちゃんのおかげ」

 勇実はニヒッと笑った。自分を幸せにしてくれている、アイツと同じ笑い方で。





40/75ページ
スキ