ハジメの一歩
34/75ページ
俺とホノカは、次々に出来上がった物をテーブルに置いていった。
ロケの合間にタツミくんと勇実が戻ってきて、それらを頬張っていく。
「うまーい(笑)」
「でしょでしょ。ハジメちゃん焼きそばも絶品なのよ。
ホノちゃんのお肉も美味しいよ(笑)」
「焼いただけですけどね(笑)
ハジメさん、私も焼きそば食べたいです」
「おー、食え食え。焼くの頑張ったから、大盛りな(笑)」
「わっ。盛り過ぎですよ(笑) いただきまーす。
…んーっ」
美味いという言葉はなくても、ホノカのその表情だけで満たされる。料理人冥利に尽きるよな。
「しかし…なかなか減らないな。キタガワの分もあるからなぁ」
「あっほら。キタガワくんに画像送んなきゃ(笑)」
勇実が思い出したように言って、俺達に食べ物を配る。食べてるところを撮ろうっていう魂胆。
「お。そうだったそうだった(笑) ホノちゃん、キミので撮って送りつけてやれ」
「ハイ。じゃあ、皆さん寄って下さい…あれ、入りきらない…」
「貸して。…入ったか? じゃあ撮るぞ。
ざまーみろ、キタガワぁ(笑)」
ホノカのスマホを目一杯遠ざけて、全員が画面に収まったのを確認してから、変な掛け声でシャッターを切った(笑)
「ちょっと…笑わせないで下さいよハジメさん(笑)」
「へへへ。でもほら、みんないい顔だぞ? これで送っちゃえ」
【アンタの分まで食べてるよ!】っていうメッセージを付けて、ホノカは画像をキタガワに送信した。
すると数分後、キタガワから返信が来た。
「アイツ、なんだって?」
スマホを覗かせてもらうと、
【ちくしょう! やっぱり俺も参加したかった!
ホノカが楽しそうで何より。
あと、にーさんがやたらホノカに近いんじゃないの】
最後の一文を見て、思わずさっきの貼付された画像を見た。
ち、近い? そうか? 画面に入るために寄ったら、こんなもんなんじゃないの?
俺に限らず勇実だってタツミくんだって、ホノカに寄ってるのに。
でも、言われてみたら、僅差で俺が一番ホノカに近い気がする。こんなちょっとの差を、アイツは指摘してるワケ?
「…ヤキモチ?」
「ま、さか」
俺の言葉に、ホノカは苦笑いをした。
真意などさっぱり分からない、キタガワはそのメッセージの後に、バイク仲間と絶景ポイントで休憩している写真を貼付していた。
…