ハジメの一歩

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 タツミくんがパラソル2つをテーブルの脇に差して、やっと日陰が出来た。

 レンタルするついでに大量に買ってくれたらしいドリンクを、テーブルにどんと置いた。

「好きに飲んで下さいね。脱水しないように」

「おー、助かる。んじゃ、焼くか。ん? 焼いていいのか? ラジオのロケはどーすんの? つーか、どんな事計画してんの?」

 火をおこそうとして、炭を手にしたまま動きを止めた。

 矢継ぎ早の俺の質問に、タツミくんは笑いながら答える。

「この海に来ている人達に、夏の思い出とか、それにまつわる夏の歌とか、聞いていこうかと思っていて。
 バーベキュー終わった後で、向こうのビーチに行こうかと」

「ふぅん? でもさ、こっちにも結構人いんじゃん。
 全部向こうで聞き回るより、こっちで半分くらい済ましちゃえば?
 俺、焼いといてやるからさ。ちょいちょいつまみながら、回ってきたらいいだろ(笑)」

 コンロの準備をさっさと進めながらの俺の話を聞いて、タツミくんと勇実が顔を見合わせた。

「いいの? ハジメちゃん」

「さっきからハジメさんにばっかやって貰って、申し訳ない…」

「ほら! またキミの気ぃ遣いが出た。
 先に仕事片付けて、後はのんびり出来た方がいいだろ?
 キミはロケ。俺は焼き。ハイ決まり。さー行け行け」

 手のひらをブラブラさせて、行動開始の合図をした。

 タツミくんはぷっと吹き出して、

「もう…ハジメさんには敵わないな。りょーかいです。行かせて貰います」

 自分のボディバッグから、マメカラみたいな機械を取り出した。それでロケの録音をするらしい。

「ハジメちゃん、ホノちゃん、私も行っちゃうけどいいの?」

 勇実は勇実で首掛けのフリップボードとペンを装備する。

「わは。どっかのADみてぇ(笑) いいよ。タツミくんの手伝いしてやんな」

「いってらっしゃい、タツミさん、イッサちゃん。私もこっちでハジメさんを手伝います」

「りょーかぁい。いってきまーす」

 勇実は得意げにニーッと笑って、タツミくんの後を追いかけていった。

「こんにちは。○○ラジオの後藤といいます。
 今、ラジオのロケをやらせて頂いてまして…」

 タツミくんが隣のテーブルの学生連中に声を掛けて、インタビューの承諾を交渉し出したのを見届けると、

「さぁ、俺らは俺らで頑張んないとな。火はもういいかな…
 ホノちゃんは肉焼いといて。俺、焼きそば作るから」

「ハイ、わかりました」

 こうして俺達は、分担された各々の仕事をこなしていく事になった。





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