ハジメの一歩
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浜辺の最寄りの駅に降り立った。
時間は10時。太陽が本格的に照らしつけて、ジリジリと肌を焦がす。
「うわぁ、人いっぱいだね! やっぱり」
「そうだなぁ」
お盆前の平日だけど、世間一般では夏休み真っ只中。学生連中が多そう、もちろん家族連れもいるが。
「あ…しまった。ここ、日陰がないのかぁ」
バーベキュー場が見えてきた所で、タツミくんが声を上げた。
確かに、すでに人が到着しているテーブルには、持参したのかパラソルやテントが張られているが、他は炎天下に晒されていた。
「タツミくん? パラソルの貸し出しあるみたいだよ。
でも、バーベキューの窓口じゃなくて、向こうのロッカーとかシャワーとかある方の売店だって」
勇実がスマホで検索しながら言った。
「そう? じゃあ、借りに行ってこようかな。
ハジメさん? 窓口で受付と食材の受け取りお願いしていいです? ネットで予約したから、俺の名前を言ってくれれば大丈夫のはずなんで。
あ、あとコンロセットも有料で借りてるので、それもお願いします」
「おー。了解」
「イッサ? 一緒に来て」
「はぁい。それじゃハジメちゃん、ホノちゃん、また後でねぇ」
そう言って、タツミくんと勇実は遠くにある売店の方へ歩いていった。
しばらく二人の背中を見送っていると、タツミくんが後ろ手で勇実の指先を掴んで…
勇実がそれに気付いて、自分の指先を絡めて…
てっきり恋人繋ぎをするのかと思いきや、そのまま、指先で繋がったまま。
ただそれだけなのに、何故か、心がきゅーっと締め付けられた。
堂々とイチャイチャしない、アイツららしくて、逆にドキドキしてしまった。
「…見ちまったなぁ…」
ボソリと言った俺の言葉を聞いて、
「…そうですねぇ…」
ホノカもボソリと呟いた。
「…まっ、仲がいいのはいいことだよな。
さ、俺らも行きますか。つーか、こっちの方が大仕事じゃないか?(笑)」
「ふふ。そうかも。私、力持ちなんで何でも手伝います」
「そーだそーだ。キタガワを見事押さえ付けた腕っぷし、期待してますよ? ホノちゃん(笑)」
「わっ。ハジメさん言いましたね? ひどい(笑)」
あははと笑いながら、俺とホノカはバーベキューの窓口へ向かった。
あ、今、お互いにサラッと呼び合えた。
また、俺達の壁がひとつ減った。
…