ハジメの一歩

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「へっ」

 ホノカがスマホの画面を見せてくれる。メールアプリでのホノカとキタガワのやりとり、見ちゃ悪いと思いながらも、ホノカが見て欲しいらしいキタガワのメッセージを読んだ。



【大学の仲間内でツーリングに誘われていた事、忘れてました!
 先約なのでオレはそっちに行きます。
 ほんとは海の話聞いた後すぐに思い出してたんだけど、そうするとホノカ、私も行かないってなるだろ?
 だから黙ってました。
 にーさんと、タツミさんと、イサミさんと、楽しんでこい!
 大丈夫、あの人たちめっちゃ楽しいから。
 人見知りのホノカでも簡単に仲良くなれるから。
 そんじゃ、お互いいい一日にしような。みなさんによろしく!】



「おいおい、アノヤロ」

 この文章を打っているキタガワの顔が目に浮かんだ。ヘラヘラニヤニヤ、でもホノカへの気遣いが見られる。

 なになにどーしたの? と勇実とタツミくんも寄ってきて、キタガワのメッセージを読むと、あららぁ、と顔を見合わせた。

「まぁ、しょうがないよね。キタガワくんの分のバーベキューも、みんなで食べちゃおう(笑)」

「うんうん。それで、焼いてるところ食べてるところキタガワくんに送ってさぁ、自慢しちゃおう(笑)
 ねっ、ホノちゃん」

「えっ…あ…ハイ、そーですね…
 まったくもう…勝手なんだから…
 みなさん、ゴメンナサイ。後日北川をきつく絞っておくので…
 私ひとりですけど、宜しくお願いします」

 深々と頭を下げるホノカに、もちろん! と俺達は明るく言った。

「あっ電車出ちゃう。行きましょう」

 タツミくんが走り出し、それに続いた。俺の後ろを付いてくるホノカを振り返って、

「俺も参加させてな、キタガワの成敗(笑)」

 と言ったら、

「ハイ、こってり絞っちゃって下さい」

 ホノカは真顔でそんな事を言った後で、くしゃっと笑った。





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