ハジメの一歩

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「え、あれ、なんで?? だって、ラジオ…」

 今、ラジオから間違いなくタツミくんの声が流れているのに、本人が目の前にいる。

 混乱していると、タツミくんがクスッと笑って、

「あ、それ録音です。ちょっと試してて」

 言いながら勇実と一緒にカウンターの席についた。

「イサミさん! タツミさん! ようこそっす! この前は出演させて貰って、チョー嬉しかったっす!」

 キタガワが騒々しく話しかける。

「ふふ。キタガワくんの登場、リスナーさんもいい反応だったよ(笑) よかったらまた遊びにおいで」

「まじすか! 行きます行きます。あ、いや、にーさんのゲンコツが飛ぶんで、やめときます」

「当たり前だ、仕事しろっつーの!」

 キタガワがあまりにもお花畑なんで、たまらず一喝した。

「ふふ。お久しぶりです。今まで顔出せなくて、ごめんなさい」

 いっこしか違わないのに、相変わらず丁寧なヤツ。

「おー。今更だけど、お帰りな。
 忙しいんだろ? でも、勇実からしょっちゅう話は聞くし、ラジオも聴いてるし、久しぶりな感じは全然しねー(笑)」

「あはは。俺も、イッサにしょっちゅう聞いてるんで(笑)
 味噌が変わったって聞いた時は、驚きましたけど」

「うん? ああ。ラジオで美味いって言ってくれて、サンキュな。
 …前のヤツでなくて、ほんとにいい?」

 戻す気はさらさら無いけど、でも、ファンでいてくれた彼を目の前にすると、そう聞かずにはいられない。

「もちろん。今日も味噌、ください。イッサもいいんでしょ?」

「うんー。あ、ハジメちゃん、ギョーザもつけてね」

 キタガワと何か話していた勇実が、ぱっとこちらを振り返って言った。

 この二人の、俺に対する空気も変わんねぇな。





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