ハジメの一歩

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 とまあ、これが味噌の味が変わった経緯。

 勇実のブーイングを覚悟していたが、勇実は新しい味をあっさり受け入れて、

「今度紹介してね(笑)」

 と言い出す始末。だから、そういうのじゃないんだって。

 ホノカは、新しい味の架け橋をしてくれた大事な存在ではあるけれど…

 恋に発展するかって言ったら、それは多分違うような。

 ぶっちゃけ…この先、オマエとの恋愛を超えられる気がしねぇ。なんて言ったら、勇実のヤツ、困るんだろうな。

 こんな事を思うのは、ホノカに試食して貰った日以来、ホノカに逢えてないからだろうか。もう、2ヶ月くらい経っちゃってる。

「どうせまたオマエが強引に呼んだんだろ。来たい時に来させりゃいいのに」

 久しぶりにホノカの名前を聞いて、これから逢えると知って、心が弾んだ。ということは、ちょっとは気になる存在なのかな。

「ウシシ。ちょっとね、オレ、色々計画してんすよ。あー、早く来ないかな」

「分かったから、仕事してくれ。ハイ、いらっしゃい」

 キタガワのよからぬ企みを聞いてる暇はなかった。

 正午に差し掛かり、客足もピークになった。

 俺とキタガワで必死に捌いていった。先週のラジオのおかげで、味噌ばかりが出ていく。

 ホノカはまだ来ない。代わりに、

「いらっしゃ…アレ!?」

「ハジメちゃーん! 食べに来たよ。お客さんすごいねぇ」

「こんにちは。うわぁ、変わってないなぁ」

 引き戸を開けて入ってきたのは、勇実とタツミくんだった。





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