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「…開けていい?」

「モチロン…なんでそんな内緒話みたいなの(笑)」

「へへ…なんとなく(笑)」

 クスクスと笑い合いながら、私は包み紙を剥がしていった。

「あ…かわいい…イヤリング」

 蔦のデザインのリングにオレンジ色のクリスタルとパールが連なったそれを、自分の手のひらに転がすとタツミくんがひょいと摘まんだ。

「んー、イヤリングじゃないの。
 イヤーカフって知ってる?
 こうして、こう…
 耳の縁に着けるんだよ」

「ふっ…あっははっ」

 タツミくんの指が私の耳を摘まみながら着けるので、くすぐったくて私は首を竦める。

「ちょ…動かないでよ(笑)…
 …ハイ、できた。
 なんでコレにしたかというとねぇ…

 これが出来なくなっちゃうから(笑)」

 そう言いながら、私の耳たぶをフニフニ触るタツミくん(笑)

「わはっ…そーゆーこと? …別にいいけど(笑)
 ありがと、タツミくん…」

「どういたしま…っくしゅん」

 タツミくんがひとつクシャミをした。

「あー、ごめん、イッサ。さむさむ」

「ふふ…ほんと寒いね…
 あっそうだ」

 寒がりのタツミくんへ。私はショルダーバッグから例のプレゼントを取り出して、折角綺麗にラッピングしたけど、タツミくんの目の前で包装を解いた。

 そして、完成させたケーブル編みのネイビー一色のマフラーを、タツミくんの首に巻き付ける。

 私の一連の動作を、目を丸くしながら見ていたタツミくんが「うわ…ぁ」と溜め息をついて、

「イッサ、いつの間に…? 俺、全然気付かなかった…」

 マフラーの両端を自分の頬に寄せながら言った。

「そりゃもう…秘密裏に(笑)
 ねぇ…あったかい…?」

 言いながら、タツミくんの両手を上から添えると、何故かタツミくんが顔を赤らめた。



「もー…イッサには…敵わない…



 マフラーも…



 イサミの気持ちも…



 …あったかすぎるや…」



「…んっ…」



 水上バスはもうすぐ停留所に着こうとしていた。

 降りるその瞬間まで、私達はお互いの唇に甘く酔いしれた。





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