encourager

18/22ページ

前へ 次へ


 タツミくんの手に導かれて、商店街を突き抜け、地下鉄に乗り、繁華駅で降り、更に向かった先は…

「…あっ、タツミくん? コレ?」

「ウン。乗ろ?」

 海沿いのモールから出る、水上バスの最終便。

 タツミくんが帰国したら一緒に乗ろうって約束をした、でもずっと延び延びになっていて…今、タツミくんが叶えようとしてくれている。

 本当に出航するギリギリで、私達はなんとか乗り込めた。

「わぁっ…」

 水上バスはゆっくり海上を滑って、陸地の夜景がキラキラ、水面にも映って輝きが二倍増し。

 夜空は空気が澄んで、星が沢山瞬いていた。

「やーっと来れたねぇ…ごめんね? 遅くなっちゃって…」

「ううん…いつになったっていーよ…」

 私達はデッキで肩を寄せ合って、このクリスマスらしい風景を、白い息を吐きながら堪能した。

「…あっ、ねぇタツミくん?」

「ウン?」

「ノリちゃん達の事…知ってたの?」

「フフ…ウン。出番の前にね、ちょろっとシンジくんと話してね。
 俺から聞いたわけじゃないんだけど、彼が切なそうにつぶやくから。
 で、彼女は彼女でシンジくんとおんなじような顔するから。
 二人の決意はそう揺るがないとは思ったんだけど…

 ちょっと、お節介してみました(笑)」

 ペロッと舌を出しながら話すタツミくん。

 タツミくんのこういう所が好き。

 押し付けがましくない、やさしいエール。今までも、色んな人達の背中を押してきたよね。私の事も助けてくれたっけ。

「ふふ…っ」

 私がタツミくんの腰に腕を巻きつけると、タツミくんはすごくビックリした顔をしたけど、私の頭を胸に抱き寄せて、

「惚れ直したー?」

 とふざけ気味に言った。

 しばらくそのままの状態でいると、

「イッサぁ」

「んー?」

 私の相槌を聞いてから、タツミくんはそっと私から一歩下がって、

「喜んでくれるか分かんないけど」

「ん…?」

「…クリスマスプレゼント」

 ジャケットのポケットをごそごそと漁って、手乗りサイズの可愛らしい箱を取り出した。





18/22ページ
スキ