encourager
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タツミくんの手に導かれて、商店街を突き抜け、地下鉄に乗り、繁華駅で降り、更に向かった先は…
「…あっ、タツミくん? コレ?」
「ウン。乗ろ?」
海沿いのモールから出る、水上バスの最終便。
タツミくんが帰国したら一緒に乗ろうって約束をした、でもずっと延び延びになっていて…今、タツミくんが叶えようとしてくれている。
本当に出航するギリギリで、私達はなんとか乗り込めた。
「わぁっ…」
水上バスはゆっくり海上を滑って、陸地の夜景がキラキラ、水面にも映って輝きが二倍増し。
夜空は空気が澄んで、星が沢山瞬いていた。
「やーっと来れたねぇ…ごめんね? 遅くなっちゃって…」
「ううん…いつになったっていーよ…」
私達はデッキで肩を寄せ合って、このクリスマスらしい風景を、白い息を吐きながら堪能した。
「…あっ、ねぇタツミくん?」
「ウン?」
「ノリちゃん達の事…知ってたの?」
「フフ…ウン。出番の前にね、ちょろっとシンジくんと話してね。
俺から聞いたわけじゃないんだけど、彼が切なそうにつぶやくから。
で、彼女は彼女でシンジくんとおんなじような顔するから。
二人の決意はそう揺るがないとは思ったんだけど…
ちょっと、お節介してみました(笑)」
ペロッと舌を出しながら話すタツミくん。
タツミくんのこういう所が好き。
押し付けがましくない、やさしいエール。今までも、色んな人達の背中を押してきたよね。私の事も助けてくれたっけ。
「ふふ…っ」
私がタツミくんの腰に腕を巻きつけると、タツミくんはすごくビックリした顔をしたけど、私の頭を胸に抱き寄せて、
「惚れ直したー?」
とふざけ気味に言った。
しばらくそのままの状態でいると、
「イッサぁ」
「んー?」
私の相槌を聞いてから、タツミくんはそっと私から一歩下がって、
「喜んでくれるか分かんないけど」
「ん…?」
「…クリスマスプレゼント」
ジャケットのポケットをごそごそと漁って、手乗りサイズの可愛らしい箱を取り出した。
…