encourager
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私はノリちゃんに、これまでの事──私が2年前にマッサージ店を離れてからの事を、かいつまんで話した。
私がタツミくんと接すると心が苦しくなっていたこと…
それを、好きと自覚してなかったこと…
タツミくんが1年以上留学する、それを直前まで知らなかったこと…
タツミくんが旅立つ前に、私を好きと言ってくれたこと…
私も好きと…言ったこと…
遠距離になっても繋がり続けて…今年の春にタツミくんが帰国して…それからずっと一緒にいること。
「そうかぁ…イサミちゃん、幸せね?」
「へへへ…ウン。楽しい」
自分でものろけてると思ったけど、ノリちゃんは嫌な顔ひとつせず、ニコニコで私の話を聞いていた。
「そういえば、ノリちゃんは? カレ…シンジさんだっけ、元気にしてるの?」
グレープフルーツジュースをチューと吸いながらノリちゃんに聞くと、一瞬妙な間があって、ノリちゃんが上目で私を見つめた。
「あ、シンちゃん? うん、元気だよ。
あのね、さっきのフライヤーのライブにね、シンちゃんのバンドも出るの」
「えっそうなの?」
「うん。シンちゃん、社会人になってからもバンドの趣味続けててね。声掛けられて、出る事にしたんだって」
「わぁそうなんだ! じゃあ、タツミくんに直接声掛けられたんじゃないかな。タツミくん、いっぱい歩き回ったって言ってた」
「ふふ、そうだったのかな。
イサミちゃんもライブ観に来る? 私も行くつもりだから、またその時に逢えるね」
「うんうん! 一緒に観ようよ。わ~楽しみだなぁ」
ノリちゃんが時折見せる表情が気になりながらも…お喋りが楽しくて、潤子サンがくれた延長時間もあっという間に過ぎていった。
「じゃあイサミちゃん、お仕事がんばって。また土曜日にね。タツミさんによろしく」
「うん! ノリちゃん寄ってくれてありがと。シンジさんによろしく」
カフェを出た所で私達は別れた。少し行った先で振り返ったら、ノリちゃんはまだそこに立っていて、私に手を振った。
…ノリちゃん、何かあった?
仕事の続きをしながら…彼女に聞いて貰ってばかりだったのを、今更悔やんだ。
…