encourager
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「イサミちゃん…いたい。嬉しいけど(笑)」
相変わらずふんわり笑顔が可愛いノリちゃん。違うといえば、クシュクシュの赤毛だったのが落ち着いたダークブラウンのストレートボブになったこと。
ノリちゃんとは同い年で、ちょうど2年前まで一緒に働いていた。
私が一身上の都合でここを離れ…今年の春にプロとしてまたここに戻った時は、ノリちゃんはすでに社会人としてがんばっていた。
お互いに忙しく、なかなか連絡を取れないでいた私達…
「わ、ゴメンゴメン。
でもほんと、久しぶり。営業のお仕事、がんばってるんだね?」
「ふふ…うん。やりがい、あるよ。今日はこの近くで打ち合わせがあってね。懐かしくなっちゃって、久しぶりに顔を出してみようかなぁって」
「そうかぁ。ねぇ、まだ時間ある? 私ももう少し休憩残ってるから、ちょっとだけお茶しない?」
私達がそんな話をしていると、潤子サンが、
「いーよいーよ行っといで。
ノリちゃんもう直帰だって言ってたよね。
イサミちゃん、30分延ばしたげるから。
二人で積もる話しておいで(笑)」
と言ってくれたので、ありがたく甘える事にした。
ふとノリちゃんの手元を見ると、クリスマスイベントライブのフライヤーが摘ままれていた。
「あっ。それ見てくれたの?
それね、タツミくんのラジオ局の下でやるやつでね、タツミくんも参加するんだー」
「あ…そうか、後藤樹深って、イサミちゃんがよく話していたあのタツミさんなんだよね?
今でも、あの頃みたいに仲のいい友達なの?」
「あー、っと、それは…」
そういえば、タツミくんとの事をノリちゃんに詳しく話していなかった。
ノリちゃんの中では、私とハジメちゃんが別れて、そのまま私は恋愛をしていない体になっているんだと思う。
「その件につきましては、後ほどゆっくり、ゆーっくり、話させて下さい(苦笑)」
「ふふふっ! うん、ゆっくり聞かせて(笑)」
ノリちゃんが時折フライヤーに目を落として、ふっと息を吐いたのが気になったけれど、
「ごゆっくりね~」
と潤子サンが見送ってくれたので、私達はそのままお店を出て、近くのカフェに入った。
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