ハジメの一歩

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 その日から…奇跡のラーメンをもう一度生み出す為に、試行錯誤の日々が続いた。

「にーさぁん、あのラーメン、また作るんすか? 完成出来たら、メニューに載せる? アレ、【きたいわ屋】のイメージにもピッタリだったすよ」

「うーん…アレ、よく出来たよなぁ。
 味噌ベースなんだけど…醤油の旨味の分量をちょっとでも間違えると、全然美味くねぇ…
 くーっ、何で俺、無意識に作っちまったんだろうなぁ」

 あーでもない。こーでもない。失敗した分量のメモばかりが増えていく。

 もし出来たなら。

 今までの味噌を、引っ込めよう。

 そもそも、始めこそ出だしは良かったが、時が経つにつれて「やっぱりちょっと、さっぱりし過ぎかなぁ」という、お客の声が目立ってきて、味噌の売り上げが芳しくなかった。



 もやしたっぷりさっぱり味噌。勇実の笑顔が見たくて作っていた、思い出のラーメン。

 マッサージの学校を卒業して、再びこの商店街の近くに住みだしたアイツは、あの頃よりすっかりキレイになって…

 あの頃より、タツミくんへの想いを大きくしていた。

 俺もいい加減、前に進まねぇと。

 きっかけをくれたホノカと、しゃくだけどキタガワにも、感謝。





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