ハジメの一歩
12/75ページ
「あの、店長さん。ちがいます。ちがうんです。北川の言う事、どうか鵜呑みにしないで下さい。
練習の帰り道でですね、北川が囲まれてて。
3対1だったし。北川泥だらけだし。気付いたら竹刀振ってました。
いや、頭とか腕とかじゃないです。相手が持ってたカバンめがけてスパァンと…
あと、喉寸前で竹刀突きつけて…それだけです」
キタガワが語ったのとさほど変わらない話を、ホノカは目を伏せながら淡々とした。
「後で聞いたら、そもそもの発端は北川が相手を睨み付けたからって。自分で蒔いた種、助けた私が馬鹿みたい」
「ちがうって。オレ目ぇ悪いから、細めて見ちゃうんだよ。それをよ、あいつらガン飛ばしたってイチャモンつけてさぁ、とばっちりだったんだって」
「くっくっくっ」
キタガワとホノカの言い合いに、ついに声が漏れてしまって、ホノカの怪訝な眼差しを受けてしまった。
いやだって。その武勇伝も、年頃の男を苗字で呼び捨てるのも、感情抑えて喋るのも、俺には新鮮なんだもの。
あと、店長なんて初めて呼ばれた(笑)
「いや、その店長って、恥ずかしいな。責任者だけどさ。
ハジメでいいよ。
茹で上がった麺を湯切りして、寸胴に中途半端に残った醤油と味噌のスープを掻き集めて、一緒に大盛り用のどんぶりに移した。
…