ハジメの一歩

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「なあ…キミらって、付き合ってないの?」

 ホノカの後にはお客は入ってきてなくて、工事現場のおっさん達もとっくに店を出ていて、【きたいわ屋】には俺、キタガワ、ホノカの3人だけ。

 お昼のピークを過ぎると、客足がパッタリ止むのはいつもの事。ここでやっと、俺の昼休憩だ。

 自分のまかないを用意しながら、俺は二人にその質問を投げ掛けた。

「まさか!」
「ナイ、ナイ!」

 二人いっぺんに違う言葉を発したが、片手と首を思いきり横にブンブンと振ったのは、シンクロみたいにピッタリだった。

 それが面白くて、でも笑いを堪えて、俺は質問を続けた。

「じゃあ…なんで、マブダチ? 見たところ、正反対みたいだけどねぇ。
 あ、マブダチ言ったのはコイツね、コイツ」

 マブダチの言葉にホノカが眉間にしわを寄せたのを見逃さなかったので、サラリとキタガワに責任をなすりつけた。だって、俺カンケーないじゃん。

 ホノカは真一文字に口を結んでキタガワを睨んだが、キタガワはえっへっへと笑うばかりなので、はぁー、と溜め息をついて、

「マブダチって。誰もそんな古い言葉言わない」

 残りのスープをれんげで掬ってすすった。

「にーさん、ホノカの武勇伝、聞いてくれます?
 あのね、オレ、高3の時にちょっと、悪いヤツらに絡まれた事あって。
 そん時にね、ホノカに助けて貰ったんす。
 凄かったっすよ、電光石火っていうの? スパパーンッ! って。竹刀で相手の頭や腕をコテンパンにね」

「北川! 話を盛るんじゃないっ!」

 ホノカがキタガワの腕を掴んで激しく揺する。やべぇ、この光景、面白い。

 俺は口元を片手で覆って、肩を震わせた。





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