ハジメの一歩
10/75ページ
醤油4、味噌2、ギョーザ6枚。急ピッチで仕上げていく。
「はいっ、お待ちどおさまっす!」
キタガワがそれぞれに運んでいって、最後にホノカの前に、醤油とギョーザをゴトリと置いた。
人形みたいに、感情を読み取るのが難しそうな、涼しい顔のホノカ。そのホノカの顔が、ちょっとだけ動いた。
目を軽く見開いて…多分、これから食べるって事への喜びなんじゃないかと思う。
「剣道してきた後なんだって? だったらけっこう、ペコペコなんじゃないの」
俺の言葉に、ホノカは顔を上げて苦笑いをした。そしてまた、どんぶりに目線を戻して、
「いいにおい。いただきます」
小声で手を合わせた。いちいち礼儀正しい。俺もいちいち見なきゃいいんだけど、なんでかな、いち動作いち動作がキレイで、つい目で追ってしまう。
「なぁ、うまい? うまい?」
キタガワがホノカの横でやかましいから、
「ちょ…もう、北川、うるさいな。静かに最後まで食べさせてよ」
ホノカの鋭い一瞥を食らっていた。でもそんなのは全く気にしていない様子のキタガワ。
マブダチ…なのか? まぁ、見えないこともないが… どちらかといえば姉弟みたい?
おちゃらけたキタガワと清々としたホノカ。
この二人を繋げたものはナニ? ちょっと、興味が沸いてきた。
…