ハジメの一歩

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 アイツめ。いや、正確にはアイツらめ。

 よくも電波使って色々と宣伝してくれたもんだ。

 俺は先週の月曜昼の、とあるラジオ番組を思い返す。



【まもなく、正午です。
 はー。おなかすいた。って、俺、毎週この時間言ってますね(笑) ごめんなさい。
 そうそう。俺ね、お気に入りのラーメン屋さんがあって。
 【きたいわ屋】って知ってますか? 商店街からちょっと外れたトコにあるんですけど。
 そこの味噌が絶品でね。向こうで留学してた時、何べん食べたいと思ったか。
 あ、結局ね、こっちに帰ってきてからまだ行ってないんですけど。
 あぁ~。話してたら、ますます食べたくなっちゃった。
 出前取ろうかな? 取ってくれるんだっけ?
 …お、イッサ先生からご連絡。

 『取ってくれるよ! 今日は【喫茶KOUJI】のランチ、キャンセル? 出前取るなら、私の分もオネガイ!』

 だって。くくくっ。
 えーと、電話帳、電話帳…
 はい、じゃあ、今から掛けまーす】



 これを、厨房で調理をしながら聴いていた。まじで? 掛けてくんの?

 ジリリリリ……

 げっ。まじだった(苦笑)

 電話を取ったのは、キタガワ。

「ありがとうございます、【きたいわ屋】です。
 …ハイ! ラジオ、聴いてました! 味噌、ふたつでいいんすよね? かしこまりましたぁ!
 オレ、至急届けに行くっす! ハイ、ハイ、失礼しまっす…

 にーさぁん、味噌ふたつ、出前っす。あ、ハジメさんに宜しく伝えて下さいって、言ってました!
 いいヒトっすねぇ、タツミさん」

 バカヤロー。何年も前から知ってるっつーの。

 どんなにいいヤツかってことも。今みたいに少々ゴーインだってことも。





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