いいコンビ
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「なにオマエ、合唱部だったの? 似合わねー(笑)」
岩見沢くんが吹き出す。
「うっさいっすよ。オレ、けっこう真面目にやってたっすから」
「本当に? まぁ、副部長だったしね。でも、あんたが歌ってるとこ、一度も見たことないけど(笑)」
「まあ、ホノカまでヒドイ。ほらオレ、マエストロ専門だったから(笑)」
肩肘張ってタクトを振る真似をする北川。それを見て近藤と岩見沢くんが腹を抱えて笑う。
「そうだなあ、思えばお前がいた頃が全盛期だったな。
お前達が卒業した後部員が入ってこなくて、人数足らずで同好会に降格…
それに顧問をしてくれてた音楽の森先生が一昨年で退職なさって、それで完全に廃部になっちまったからなぁ」
「えーっそうなんだ…がっかり」
珍しく落ち込む北川に、俺は懐からこの日限りの金券の束を取り出して手渡した。
「ほれ、折角来たんだから…まだそんなに回ってないんだろ? これ使って、ゆっくり楽しんできな」
「えっ先生いーの? っていうか、先生、オレらと一緒に回ろうよ」
「いいから。俺はこれでも見回りの最中だから。
ほら、お前○○屋の団子好きだったろ。今年も卸すのお許し頂けたから。早く行かないと売り切れるぞ」
「わあ、○○屋まだやってんだ! にーさん、そこの団子超美味いの。なっホノカ。えーと何年何組で出してる?」
北川に言われて、近藤と岩見沢くんが肩を寄せ合ってフロアマップを広げて探している所で、俺は北川の肘をクイクイと引っ張って、一歩後ろへ導いた。
「なに、先生」
北川は訝しんで、でも何かを悟って小声で聞いた。
「仲いいな。あの二人、ずいぶん長いのか?」
「うん。もう3年以上…何でそんな事聞くの」
「お前が入る隙は全くなかったのか?
内緒にしてたけど、俺、オマエと近藤の事応援してたんだけどな」
ひどいことを言う、と自分で思った。
そんな事を今更言って、特別可愛いこの教え子を、どうしようってのか。
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