いいコンビ

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「まぁ…今言って貰ったしな。
 わかりました。慎んでお受け致します。
 詳しく決まったらまた連絡してくれ」

 そう言うと、二人はほっと安心した顔をして笑い合った。

 そこへ、放送室の扉がガチャリと開いて、先程の辻井が迷子の弟と出てきた。

「久間先生! ありがとうございました。
 親にLINEしたら、体育館で劇観てたって。その隙にこいつ抜け出しちゃったらしいです。これから合流します。
 泣いてたって言ってたけど、見てみたらそうでもなかった。聞いたら、先生が沢山慰めてくれたって。
 ほら大知だいち、お礼言って」

「せんせえ、ありあと」

「どういたしまして」

 舌っ足らずの可愛いお礼を受けて、俺は年の差兄弟の背中を見送った。

「なあんだ、先生、今、クマって呼ばれてないの? 今こそ、その名にそぐった姿なのに、なあ?」

 北川が頭の後ろに組手をしながら近藤に同意を求めると、近藤は口元を隠しながら堪え笑いをした。

 北川はともかく近藤まで? ショックだな、おい。

「ふふ、あいつ、実行委員かぁ。懐かしいなぁ。なぁホノカ」

「ふっ、そうだね」

 辻井が右肩に着けていた黄色い腕章に思いを馳せる北川と近藤。この二人にも、当時は色々と頑張って貰ったっけな。

「二人、実行委員やってもらってたんですよ。まぁ半ば僕が強引にですけどね」

「はい。二人からよく聞いてます(笑) キタガワが事を起こしたのがきっかけで、でしょう?」

 驚いた、そんな事まで彼に話したんだ。近藤はもちろん、北川にも信頼が厚いんだ。まぁ、彼になついているのは一目瞭然だが。

「ねえ先生! なんでさあ、オレの合唱部の出し物が無いのよ。
 毎年、音楽室でこじんまりとコーラスコンサート開いてたのにっ」

 岩見沢くんとたわいもない雑談をしていると、北川がパンフレットを広げておおげさに嘆いた。





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