ふとした風に吹かれる
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「うわー、久しぶり! 何でこんなとこにいるの?
てか、覚えてる? 俺のこと」
イサミが記憶を辿っているのか少し戸惑った顔をしていたので、彼がふと落胆した表情を見せる。
でもイサミは思い出したみたい、パッと顔を輝かせて、
「…あっ? もしかして、べーやん?
うわあ、ほんと久しぶり!
何でこんなとこでって、それはこっちのセリフ。べーやん、家こっちじゃないよね」
と彼の方へ近づいて言った。
「俺、家出てこの近くでひとり暮らししてるんだ。
…っと、そちらは?」
イサミが言うところのべーやん君が俺に気付いて、ペコリと会釈をしながら、イサミ、俺、イサミ、俺と忙しそうに視線を移していた。
「あ、こちら、私の…婚約者? でいいんだよね? 後藤
タツミくん、こちら、中学の時のクラスメイトで
少し顔を赤くして俺を紹介するイサミと、それを聞いて目を丸くするべーやん君を見ながら、なんか…吹き荒れそう? と思った。
…