深夜のオフレコ

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北川
「それから…しばらくして…
 アイツ、1週間くらい学校休んで」

樹深
「ウン」

北川
「アイツどうしたの、剣道の修行にでも行ってるのって担任に聞いたら、
 …親父さんが亡くなったって。忌引きで休んでるんだって」

樹深
「…ウン、そっか…」

北川
「家族葬、っていうので、オレらには一切知らされなかったんすよね…
 先生、何でオレには言ったのかなぁ…
 それで…アイツが学校に戻った頃は、周りはもう受験でいっぱいいっぱいだったから、誰もアイツの事なんて気に留めてなかったなぁ…
 アイツも、授業以外は教室にいなかったし。道場で素振りしてたのを見た事があるけど、それ以外は何をしていたんだろう?

 …それでね…ある日ね…
 アイツ、道端でうずくまってて」

樹深
「ウン…どうした…?」

北川
「立てなくなっちゃってたんす。オレが手を引いてもびくともしなくて。
 あぁこれは、一気に来たんだなって。ガマンしまくってたんだなって。
 オレ、おぶって家まで送ってって」

樹深
「へぇっ、やるね、キタガワくん。ヒーローみたいよ」

北川
「はは、アイツんち、学校からめっちゃ近いんすよね(笑)
 オレより背丈あるのに、意外に軽くてね。
 …アイツね、泣いちゃった。
 泣き方も、なんか、ガマンしてる感じだったんだけどね(笑)

 オレを助けてくれたアイツの…
 弱い部分を見せられて…
 オレの中で、またナニかが変わっちゃったんすよね」

樹深
「守ってあげたい? 的な?」

北川
「ふふ…そんなカッコいいもんじゃないけど。
 しんどいの、忘れさせてやりたいなと。
 それからだなぁ、今まで苗字呼びだったのが名前呼びになって…
 アイツは呼ばなかったけど…(笑)
 高校卒業して大学別々になっても、何かしら呼びつけて連れ回してました」

樹深
「フフ…彼女、メーワクじゃなかったのかな?(笑)」

北川
「タツミさんひどっ(笑)
 大丈夫っすよ、アイツ、そんなカオしたことないもん。
 …エ、メーワクだったのかなぁ??
 エェーッ…だったら、オレショックなんすけど」

樹深
「(笑)(笑)」





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