とある男達の、とある居酒屋での会話

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「元クン、アレ、お父ちゃんから後藤さんへのお祝いだから。食べちゃダメよ(笑)」

 電話を終えて店の中に戻ってきたハジメさんに、奥さんは肩を叩きながらそう言って、他のお客さんの所へ呼ばれて行った。

「はあ? ナニが?
 あっ、舟盛り! なんでこんな奮発してんの。

 …あっ、あぁー。アレね?」

 ハジメさんもそれの意図が分かって、空いたグラスに再びビールを注いだ。

「婚約おめでとう」

「フフ、ありがとうございます」

 カチンとグラスを合わせて乾杯、舟盛りや、他にも頼んだ料理に手をつけながら、俺達はのんびり話した。

「まさか、ラジオのCM中にねぇ。
 【私事ですが、先程プロポーズさせて頂いて、無事OK貰いました(笑)】なんてさぁ、
 はあ?? って言っちまったよ。
 キタガワなんて、キャー! って女みたいな反応するし」

「フフ、すんません(笑)」

「なぁ、何て言ったの?」

「エ? えーと、まあ、夏の海で、ハジメさんに宣言したのを、そのまま」

「はあ?? ばかだな、もう少しひねれよ」

「そんな事言われても。俺の本音だし。イッサは喜んでましたよ?」

「あーあーあー。いい、いい。そういうの、言わないでいい。ヒミツにしとけ。
 はあー、やっぱり俺、練習台だったんじゃんな」

「(笑)。何でですかね…ハジメさんには、何でも話せるというか、報告義務があるというか」

「あのなぁ…俺、キミの何なの」

「ウン?
 …何でしょうね?(笑)」

「聞いちゃうんだ(笑)」

「恩人? 先生? そんな感覚ですかねぇ」

「ふぅん、でも、少しはあるんじゃないの、元彼っていう意識が」





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