呼吸を重ねて

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 (★)

「ったく、アイツは変なところで勘が冴えるな(苦笑)」

 お店の脇の細道を入って、裏口の扉の所に連れてこられた。

「う…ごめんなさい。私が余計なこと言ったから」

「ホノちゃん、顔真っ赤」

 私の頬に添えられる、ハジメさんの大きな手。

 ドキドキしながら、その上に自分の手を添える。

 熱を冷ましにここに連れてきてくれたのかもしれないけれど、これじゃ逆効果。

 動揺をごまかすために、目を泳がせながら違う話を振る。

「いつも、ここで電話掛けてくれてるんですか?」

「ん? そう、だよ」

 言いながら、何故か、私のポニーテールの結び目をほどきだすハジメさん。

「エ? わ、ハジメさん? ナニ?」

 まとめていた後ろ髪がサラッと落ちて、後頭部を撫でつけられた。

「あのー、さ。
 こんな所で。しかも明るいけど。



 …キスしていいですか」

「エ」

 私が髪を下ろしたら、その気になった合図。

 暗黙の了解になった覚えがないけれど。

 それって、その、スル時の事と思ったけど。

 自分から下ろすんじゃなくて、こうやって下ろされるのも含まれるの? と思ったけど。

 そんな諸々の抗議の思いを、全部押し込めて…

 私はこくりと頷いた。

 ハジメさんはホッとした顔を見せて、

「恥ずかしがってるホノちゃんが、可愛すぎる」

 そう言いながらうなじに手を差し入れて…

 柔らかい唇を寄せた。

 何度も何度も音を立てて啄んで、唇がちょっと離れる度に、私とハジメさんの呼吸が重なる。

 頭がぼうっとなった頃に、頬に添えていたハジメさんの片手がスルスルと首筋を通って、

 鎖骨で光っているネックレスのパズルチャームをギュッと掴んだ後で、

 服の上から胸の膨らみをそっと揉みしだいた。

「…ン…」

 ハジメさん。

 エッチ。

 これ以上はだめだから。



「ホノちゃん。

 ホノカ。

 好き過ぎて…ゴメン。

 今だけ。

 もう、この時間帯には来るな。



 …止まらなくなるから…」

「ウン…」

「また…夜電話するな…」

「ンッ…



 …待って…る…」



 にーさん、お客さん入ったっすよー! という北川の声が聞こえるまでの数分間だけ、



 私達は甘くて心地よい世界に身を投じた。










呼吸を重ねて〈完〉





[リアルタイム執筆期間]
2015年8月4日~9月25日

[改稿終了日]
2021年6月25日






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【呼吸を重ねて】あとがき





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