呼吸を重ねて

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 私達は早い時間にキャンプ場を後にして、帰る道すがらファミレスに寄って朝ごはんを食べた。

 特に渋滞にはまらず、お昼前には私の家の前に到着出来た。

「到着~」

「ふっ。ハジメさん、運転お疲れ様でした」

「ウン。ホノちゃんもな」

「………」

「………」

 指先を握り合う。名残惜しくて、なかなか車から降りられない。

「また、遠出できたらいいな」

「そうですね…今度は日帰りにしましょうね」

「どうして」

「だって…ハジメさんが大変になっちゃう」

「(笑) んなことないけど。
 まぁ、じゃあ、日帰りにするとして。
 行きたい所、リクエストはありますか?」

「え…と…
 あっそうだ。タツミさんが昨日のラジオで、紅葉がキレイって言ってました。
 こっちの方で見頃になったら、ハジメさんと見たいです」

「あぁ、そんな事言ってたなぁ。
 ウン。分かった。約束な」

「ふふ。約束。
 …じゃあ、そろそろ…行きますね」

 車を返しに行かなきゃいけないハジメさん。いつまでも引き留めたらダメだ。

 荷物を抱えてドアを開けようとすると、指を握っていた手を離して、袖を引っ張ったハジメさん。

 えっ? と振り向いた時に、もうひとつの手でポニーテールの先っぽを掬われた。

「元に戻っちゃったな…おろしたのも…かわいかった…」

「ふ…ふふっ…くすぐったい」

 弄られる度にハジメさんの指がうなじを掠るから、思わず肩を竦めた。

「あっそうだ」

「えっ? なんですか?」

「合図にする?」

「? なにが? なんの?」

「髪を下ろすの。

 …ホノちゃんが

 …その気になったら…」

 どういうイミか、瞬時に理解した。

「だめっ」

「くっくっ。ジョーダン。
 家でゆっくり休みな。
 お母さんに宜しくな。
 夜、電話する」

 真っ赤な顔の私にやさしいキスをして、私を下ろした後、ハジメさんは走り去っていった。



 家に入ると、お母さんがテレビを観ながらお昼を食べていた。

 私の早めの帰宅に驚いていたけれど、すぐに私の分の昼食を用意してくれた。

「帆乃夏、熱でもある? 顔少し赤い」

 お母さんに言われて、ドキッとする。

 先程の事、それから…

 昨夜と今朝のコトを、思い返していたから。

「う、ん。疲れたのかな。平気だよ」

 うそっぱち。でも、こればかりは、お母さんにもヒミツ。



 私とハジメさんの



 …大事なヒミツ。





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