呼吸を重ねて
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(★)
ハジメさんの話を聞きながら、その時の私の気持ちはどうだっただろう、とゆっくりと記憶を辿った。
「あの…ね…」
「…ウン」
「私…は…あの時はまだ…好き…って分かってなかった…ですね」
「…なんだよ~」
拗ねたような声を出して、ハジメさんの手がまた動き出す。
今度は太ももの内側と外側を行ったり来たり。
「わ…っ、ヤメ…約束したのに…」
「(笑) …続けてよ…」
「んっ…
でもね…話しやすくて…やさしくて…
一緒にいて…安心するなぁ…って…思って…
…壁なんて…んっ…作ってなかったですよ…」
腰の一番細い所をハジメさんの熱い手がさまよう。
「(笑) …ほんとに?
…それで…?
どの辺で…そういう気持ちになってくれた…?」
「………た時」
「ン…?」
「…お店で、指を握られた時…
あ、この人の事好き…って思った…
そしたら、好き…って言われて…
…舞い上がっちゃった…」
「(笑) …テンパってたなぁ。
それの前の付き合ってには、ここには響かなかった…?」
また、上へ上がってきて、鼓動が波打つ所をトントンと指で叩かれた。
ついでにまた、ゆっくり胸をまさぐられて、尖端を軽く摘ままれる。
「ァ…あの時…は…ビックリし過ぎた…だけ…ァ…」
「ふぅん…そっか(笑)」
「…も…おしまい…だから…
ね…ヤメテ…ウソツキ…」
動かさないって言ったのに。めいっぱい恨みを込めて、ハジメさんを睨む。
何の罰ゲーム? 心臓がもたない。
「はぁ…」
私の耳の裏でハジメさんが溜め息をついた。
「…どうしたんですか…」
「いや…電気…点かないなぁと思って」
「そう…ですね…ブレーカー上げに行かないとダメじゃないですか…?」
この恥ずかしい状態を抜け出すチャンスと思って、乱れた服を直しながら立ち上がった。
が、手首を掴まれてまた座らされた。
「…まだいいよ…まだ暗いままで、いい…」
ハジメさんの声が背中に伝わって響いた。
私を抱きしめたまま手を伸ばして、ランタンの灯りをフッと消した。
…