呼吸を重ねて

43/62ページ

前へ 次へ

 (★)

「…っはぁ」

 ハジメさんの唇が離れると、ザアッと雨の音が蘇った。

 やっと空気を取り込める状態になったのに、息をよく吸えない、ハジメさんが続けざまに啄むキスをする。

「んっ…ん…ン」

 私の喉の奥から絞り出すような声に重なって、リップ音が軽快に鳴る。

 唇から鼻、眉間、こめかみ、額、耳たぶにまで、熱い吐息を残していく…

「…コワクナイ…?」

 また唇に戻って、くっつけたままそう言われた。

 雷なんかとっくに飛んでった。

「ハイ…」

 と言ったと同時に、ハジメさんの熱い舌が入り込んできた。

 頬に当てていた手がうなじに差し込まれて、より固定された。

 夕飯前の未遂を塗り替えるみたいに、深く、深く、私の口内を掻き乱す。

 並んで座っていたはずの私達、いつの間にかハジメさんが上から覆い被さって、私はソファーの背もたれへ押し倒されていた。

 激しく打ち付ける雨音と、まだ電気は復旧しない、ランタンに僅かに照らされた空間の中で、私とハジメさんの乱れた呼吸が重なった。

「…ホノちゃん…」

「…ハイ…」

 ハジメさんの指が私の指の間にするりと入り込んで、ギュッと握られた。

「………」

「…エ? …ハジメさん…?」

 ハジメさんが黙り込むので、不安になる。

「…コワクナイ…?」

 同じ質問。

 でもさっきと違うのは、ハジメさんがとても切なそうで、掠れ声で言う事。

「…雷、もう行っちゃったから…ダイジョウブ…」

「それじゃなくて…
 …俺」

「…エ? ハジメさん? を? 私が?」

「…ウン…」

 ハジメさんが一度深く息を吐いて、続ける。

「…あのね…
 ホノちゃんが上から降りてきて…
 俺に抱きついたでしょ…?

 そこから…もう…もうさ…
 …タガが…外れて…

 …好き過ぎる…

 …ねぇ…許して…?」

「…ナニ…を…?」

 ハジメさんが言おうとしているコト、わかる、なんとなく、私がして欲しいコトと同じ。

 でも、確かな言葉が欲しくて、敢えて聞く。



「キミに

 触れたい

 メチャクチャに



 …シタイ」





※よければこちらもどうぞ
【呼吸を重ねて】中間雑談・5





43/62ページ
スキ