呼吸を重ねて

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「…ッ…」

 何度も唇を吸われて、その度に響く水音を聞いて、私の内側から恥ずかしい気持ちが競り上がる。

 お店で何度も経験済みなのに、今日はことさら羞恥心が大きい。

 鼓動を隠したくて手で覆いたい、でも、ハジメさんがそれを許さない。

 ハジメさんに柔らかく拘束されたまま、唇の感触を一心に受ける。

 …コーヒーの香り。

「コーヒー…冷めちゃったの…飲んだ…?」

 ボゥッとなりながら、ハジメさんに聞く。

「ン…? ウン…飲み干した…」

 熱っぽくハジメさんが答える。

 徐々に…お互いの唇に空間が出来る…

 舌…入れる…?

 私とハジメさんの熱い息が重なって、少しだけ、舌先が触れた、その時。

 ボーン。ボーン。ボーン。

 壁掛けの振り子時計が、18時を報せる為にけたたましく鳴り響いて、私達は瞬時に身体を離した。

 鳴り終わるまで、見つめ合って…

「…へへ。充電終了」

 ハジメさんはニヤッと笑って、キッチンへ向かった。

 ドキドキがすごくて、私はしばらくソファから立ち上がれなかったけれど、気を持ち直して、ハジメさんと並んでキッチンに立った。

「ホノちゃん、生もの出してくれる?」

「ハイ。わぁ、ハジメさん魚介類も持ってきてくれたんですか」

「おう。これで海鮮焼きそば作ろうな」

「やった。楽しみ」

 そんな会話をしながら材料を切っていって、少しずつ落ち着きを取り戻した。

 その一方で、ハジメさんのコーヒー味のキスと、さっき見た夢が、なんでだか重なって、

 ハジメさん、まだしてないって言ったけど、私が眠ってる時に…したのかなって急に思った。





 …後日、私が問い詰めたら、

「…ハイ、しました…
 だって! 寝てるし…かわいいカオだったし…
 するなって方が…ムリでしょ?」

 と、ブツブツと言いながら耳を真っ赤にして自首した(笑)





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