呼吸を重ねて

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 ログハウスに戻ってきて、やっと中をじっくり見る事が出来た。

 1階は小さいキッチンに、ランタンが乗ったダイニングテーブル、テレビと二人掛けのソファーがふたつ置いてあった。

「ホノちゃん、来て来て」

 先に2階に上がっていたハジメさんが私を呼ぶ。

 リビングインの階段を上ると、天窓が着いた寝室がふたつ。それぞれシングルベッドがふたつくっついて並んでいた。

「わぁ、夜になったら星を見ながら寝れますね。楽しみだなぁ」

 ベッドに仰向けに寝転がって無造作に腕を広げた。まだ明るい天窓の外側を見る。

「ほんとだ。けっこう大きいな?」

 ハジメさんも隣のベッドに大の字で寝転ぶ。

 しばらくボンヤリと天窓を眺めて…

 ふと、私の指先に触れた感触。

 そこに視線を投げると、ハジメさんが半回転でうつ伏せになって私に近づいて、私の指先に手を伸ばしていた。

 心臓が波打つ。二人きり。ベットの上。

「…ホノちゃん…」

「ハ、ハイ…」

 ハジメさんの上目遣いに心臓が止まりそう。

「…俺…」

「ハ、ハイ…」

「………
 ………ねむい」

「ハイ…えっ? ねむい?」

「うぅ…ごめんな…寝転んだら、急に眠気が…」

「そりゃそうですよ…ここに着いてからひっきりなしに動いたんですから…
 それにハジメさん、今朝すごく早起きだったですよね?
 少し寝て下さい。夜ごはんのバーベキューまでまだ時間あるから」


「うーん…いや…ホノちゃんと一緒にいるのに…寝たらマズイ…」

「もう…気にしなくていいのに…
 あ、そしたら眠気覚ましのコーヒー入れましょうか? キッチンの引き出しにインスタントのが入ってました」

「そう…? じゃあ…お願い。
 出来たら下に呼んで…」

「ハイ」

 むにゃむにゃとハジメさんが言うのを聞いてから、私は下へ降りて手早くコーヒーの用意をした。

「ハジメさん、コーヒー入りましたよ。
 …ハジメさん?」

 階段の下から呼び掛けても返事がない。

 寝室に戻ると、ハジメさんはうつ伏せのまま眠りに落ちていた。

 寝顔がかわいい。

 ハジメさんの頬に手を伸ばす、触れた時に心臓が飛び跳ね、手に熱を帯びた。

 ハジメさんは起きない。そのまま寝かせることにして、私はまた1階に降りた。



 コーヒーを飲みながら…心臓落ち着けと唱えた。

 今の時刻、16:16。

 いつもなら、ハジメさんのお店でお喋りをしている時間帯。



 今日は…

 帰らなくていいんだ…



 静かな昂りを感じながら、窓から差し込む西陽がゆっくりと部屋の中に溶け込むのを見ていた。





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