呼吸を重ねて

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 指輪の彼が釣ったマスのバケツが私達の前に差し出された。

 中を覗くと1、2…7尾も。

「こりゃまた沢山釣りましたねぇ。
 んじゃ、3人で頑張りましょう。
 まずはぬめりを…塩でこすって取って…水で流して…
 内蔵取るのは僕やるんで、ちょっと待って…」

 難しい所はハジメさんに任せて、簡単な作業は私と指輪の彼とでたどたどしく行なった。

 ハジメさんの流れるような手捌きにすっかり見とれて、

「すごいね、彼氏」

 彼はこそっと私に言った。自分の事のように嬉しい。

「内蔵取ったやつにまた塩を擦り込んで…ヒレの所は多めに…そうすれば焦げ落ちないから、キレイに焼けるんだよ…
 …はい、最後に口から刺していくんだけど…こう…背骨を絡め取るようにクルクル…分かります? イメージはこう…なんだけど」

 ハジメさんが2本の串を持って、1本を魚の背骨に見立てて、それにもう1本の串が巻き付く様を再現してくれる。

 なるほど! と私も彼も理解して、いざ挑戦。

「こう…こう…できた! …できた? 合ってます?(苦笑)」

「(笑)。上手い上手い。その調子であと1尾頼むね」

「ハイ」

「えっ? もう2尾しか残ってない!」

 指輪の彼が素っ頓狂な声を上げた。私達の掴み捕りの分を合わせて10尾あったマス。私と彼が1尾にあくせくしている間に、ハジメさんは5尾をあっという間に仕上げていた。

「すごいなぁ。見た所、俺より若そうなのに…お店持ってるんでしょ?」

「はぁ、まぁ、親からの受け継ぎものですけどねぇ。
 って、え、おにいさんいくつです? 俺26ですけど」

 最後の1尾ずつを3人で仕上げながら、そんな話をする。

「ホラやっぱり。俺もうすぐ30(笑)」

「まじですか。全然見えない」

「ははは。ねぇ二人とも、よかったらキミ達の分も俺達の所で焼かない? お世話になったから、うちの奥さんにも、みんなにも紹介したいな」

「えぇ? どうする? ホノちゃん(苦笑)」

「えぇ? どうしましょう? ハジメさん(苦笑)」

「いいからいいから。ついておいでー」

 なんだか妙な展開で、仕上げたマス達を持って、半ば強引に私とハジメさんは指輪の彼についていく事になった。





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