呼吸を重ねて

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 魚の掴み捕りの出来る川辺にやってきた。

 人工的に浅く堰止められた区画でマスが放されていて、貸出のサンダルに履き替えた私達は、川の冷たさにたじろぎながら魚影を追いかけた。

「お…っと…難しいなこれ?」

「そ…ですね…ひぁっ!」

「どうした!?」

「い、今脚かすった…うぅ、ヌメッとした…
 ぎゃっ…また~…」

「ホノちゃんの脚、美味いんかな?(笑)
 …よしっ。1尾ゲット~」

 何故だか私の足元に群がるマス達に狙いを定めて、ハジメさんは素早く掴み捕った。

「ちょっ…もう…私を餌代わりにしないで下さい」

「(笑)。ほら、また寄ってきた。いけそうだぞ?」

「あ…ほんと…えいっ」

 ハジメさんに言われるまま掴みにかかると、簡単に捕れた。

 が、ニュルニュルしてるから手からこぼれそう。ハジメさんが一緒に掴んでくれて、バケツに放り込んだ。

 捕まっちゃうって分かったのか、マスは私達のそばに来なくなったけど、その後また1尾ハジメさんが捕って合計3尾。これで終わりにする事にした。

「ちょっと待ってな。調理器具をいくつか借りてくる」

「ハイ。じゃあ先に行って待ってます」

 そう言ってハジメさんは道を反れていったので、私はそのまま流し場とコンロのある東屋に向かった。

 掴み捕りだけでなく釣り堀もあったみたい、結構な数の人がいて、少し混雑していた。

 とりあえず流し場で空いている所を見つけて、マスの入ったバケツを置いてハジメさんの帰りを待つ。

 すると、

 キィンッ

 金属音が耳をつんざいた。

「?」

 音のした方向を見ると、ホワイトゴールドの太めの指輪がこっちに転がるところだった。





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