呼吸を重ねて

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 シャワー室を出ると、ハジメさんがすでに外で待っていた。

 バルコニー型のフリースペースで、柵に肘を掛けながらぼんやりと遠くを眺めていた。

 私の気配に気付いて、肩越しに振り返ってにっこり笑った。

「さっぱりした?」

「ハイ。汗も疲れも全部、流してきました(笑)」

「(笑) 飲む?」

 差し出された1本の炭酸のペットボトル。もう1本持っていて、まだ未開封だった。

 先に飲んでくれてよかったのに、わざわざ私を待っていたのかと思うと…頬が緩んでしまう。

 プシュウッと同時に空けて、ゴクリと喉を鳴らすタイミングまで同じなのが可笑しすぎた。

「ワザと?(笑)」

「ちがいますよ!(笑)」

「あー。あのさ。
 いいね。ソレ」

「? 何です?」

「コレ」

 シュシュでゆるく結わいて左の肩から前に流した、まだ生乾きの私の後ろ髪を、ハジメさんが軽く手に乗せてサラサラと梳いた。

「見たことなかったから、新鮮」

「そう…ですね。言われてみれば、ハジメさんの前ではポニーテールしかしてないかも。
 でも家で休んでいる時は、いつもこんなですよ」

「ふぅん。いいね」

「何がですか。もう。あんまりイタズラしないで下さい」

「(笑)」

 私の言葉に構わず、毛先を弄るハジメさん。

 ああもう、シャワーで流した動揺がまた戻ってきた。

「ハ、ハジメさん。お腹空きませんか? アスレチックであんなに動いたから」

 ごまかしたくて、無理矢理話題を変えてみる。折角のアウトドア、自分の変な気持ちに振り回されたくない。

「うん? そうだなぁ、お昼のピザはすっかり消化されたな(笑)
 あっそうだ、あっちに魚の掴み捕りがあるらしい」

「あ、さっき私も案内図で見ました。行ってみますか?」

「ウン。捕った魚、その場で焼いて食べれるみたいだから、おやつ代わりにどう?(笑)」

「ふっ、いいですね(笑) 行きましょ」

 飲み干したペットボトルをくずかごに入れて、私達は川の方へ歩いていった。





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