呼吸を重ねて

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 それから私達は、ゴールするまで…

 次のポイントに辿り着くまでの歩きの間だけ、どちらからともなく自然に指を絡めた。

 無意識に寄り添って、互いの二の腕が触れ合う。

 何でだろう、こんな事はハジメさんのお店で何度もあったのに…

 場所が外になっただけで、指先を握るが指を絡めるになっただけで…

 こんなにも私の肌は発熱する。

「ホノちゃん? 疲れちゃった?」

 急に無口になった私を、ハジメさんが視線を落として心配そうに見る。

「え。あ、だ、大丈夫ですよ?」

「そう?」

 首を傾げながら、絡めた指をそのままにまた前を向いて歩き出すハジメさん。

 心臓が跳び跳ねてばかりなのは…きっと私だけ。

 山の冷えた空気が全部さらっていってくれたらいいのに、と思った。



「わーっ、やーっとゴールだぁー」

「着いたぁー。お疲れ様でしたぁー」

 1時間と少しかけて、すべてのポイントをクリアした。

 ゴールに着いて改めてお互いを見ると、シャワーを浴びたみたいに汗でビショビショで、どれだけアスレチックに熱中してたんだろうって、後から笑けてきた。

「はは、汗くっさ」

「やだもう、ハジメさん。ログハウスに戻って着替えた方がいいですね」

「そうだなぁ。もういっそ、シャワー浴びるか」

「え」

「ホラあそこ。管理事務所の裏っ側にシャワー室あるから。着替え取ってこよう。
 俺らのログハウスにはお風呂付いてないからなぁ」

「あ、あ、そうなんですね」

「ごめん。あちこち行かせて」

「や、そんな、気にしないですよ。さ、行きましょ?」

 そんな会話をしながら、私達は一度ログハウスに戻って、シャワー室へ向かった。

 入口で別れて、個室に入る。

 ポニーテールを下ろし、シャワーの雫を顔面で受けながら…

 ログハウスにお風呂が無くてよかったと思った。

 二人きりの屋根の下、とてもじゃないけど服を脱いだりなんて出来そうにない…

 ハジメさんはきっと、何とも思っていない。

 私だけがバカみたいに意識してる。



 はあ、とひとつ息を吐いてから、水栓を捻って水圧を強くした。

 シャワーで流れてしまえ、私の動揺。





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