呼吸を重ねて
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「いや、全然! ですけど…いいんですか? こんな贅沢。私、てっきりテント宿泊と思ってたから」
私の言葉を聞いて、ハジメさんはホッと息をついた。
「テントもいいけど、また今度。今回はお祝いだし、はりきらせて貰いました。
…はりきり過ぎたか? 俺?(笑)」
「ふ…ふふっ…いいえ、嬉しいです…ありがとう…ハジメさん。
あ、そうか、だから戸締まり?」
「そ。早く荷物置いて、行かなきゃ」
私達が泊まるログハウスは、定員4名のミニハウスだった。
すぐそばで川が流れていて、見ていて心が澄むように穏やかになる。
バルコニーの脇にかまどとガーデンテーブルが設置されていて、向こうのバーベキューコーナーまで行かずに済むらしい。
バッグを部屋の隅に置いて、食材を冷蔵庫の中に詰め込む私達。
「事務所でも食材受け取ってるのに、家からも持ってきたんですか?」
ハジメさんのクーラーボックスを開けながら聞いた。
「ウン。家っつうか、店から。昨日使いきれなかったのを持ってきた。
焼き肉セットで予約しちゃったけど、多分それだけじゃ足りないだろ?」
「ですね(笑) いっぱい作っちゃいましょう」
中もゆっくり見たかったけれど、ハジメさんがさっきから急ぎの様子。
戸締まりを確認して、最後に玄関の鍵を閉めた。
「それで、どうしてそんなに急ぐんですか?」
小走りでまた管理事務所の方へ戻っていく私達。さっきの事務所のおじさんが、受付の窓から手を振っていた。
「ホノちゃん、腹へったでしょ?
あっちのグリルコーナーで体験やってるから行こう。
当日受付だからとっくに定員になってるって思ってたんだけど、まだ空いてるってあのおじさん言ってて」
おじさんに手を振り返しながら、ハジメさんは言った。
「体験? なんの?」
「ピザ!」
「えーっ! 楽しそう! やりたい! 食べたい!」
「だよなーっ。さぁ急げ急げーっ」
ハジメさんはくしゃっと笑って、私の手を引いた。
ちょうどお昼時でバーベキューコーナーがごった返していた。お肉の焼ける匂い、野菜の焼ける匂いが鼻をくすぐって、お腹がキューッと鳴った。
バーベキューコーナーを抜けると、グリルコーナー。ピザの焼き釜を囲んで、体験の人達がスタッフさんの説明を聞きながらピザ生地に具材を乗っけていた。
焼き釜からピザの焼ける匂いが漂って、またお腹を鳴らしてしまった。
それを聞いて大笑いをしたハジメさんも派手にお腹を鳴らして、恥ずかしそうに苦笑いをした。
…