呼吸を重ねて

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 お昼を少し過ぎた頃に、私達が寝泊まりするキャンプ場に着いた。

【○○キャンプヴィレッジにようこそ!】

 という木製の大きな看板に出迎えられて、入ってすぐ脇にあった駐車場に車を停める。

「ホノちゃん、ちょっと車で待ってて。チェックイン済ませてくる」

 と言って、ハジメさんは管理事務所の方へ行ってしまった。

 周りはうっそうと木が生い茂って、管理事務所の向こうに炊事場やテントベースが見えた。

 【↑アスレチック場】【→マスつかみ取り】【←○○の滝】などの案内板もあって、色々楽しめそうでワクワクしてきた。

 しばらくして、ハジメさんが台車に食材や調理器具を乗っけて戻ってきた。

「急げ急げ~」

「? ハジメさん?」

「あっホノちゃん。後ろにクーラーボックス乗っけてるんだ、取ってもらっていい?」

「ハイ」

 バックドアを開けると、白いクーラーボックスとハジメさんの黒いスポーツバッグが並んでいた。

 それらを台車に乗せている間に、ハジメさんは私の荷物を取り出して車の鍵を掛けた。

「あっ荷物、ありがとうございます」

「いやいや。それより、急げ急げ」

「えぇ? ハ、ハイ」

 足早に台車を押していくハジメさんの背中を、必死に追いかける。

 管理事務所のおじさんが、

「おにいさん、そんな急がなくても大丈夫だよ。
 途中からでも、ちゃんとスタッフが付くから。
 慌てないで、しっかり戸締まりしてから行きなさいよ」

 と声を掛けた。

「はいー、お世話になりますー」

 足を止める事なく、ハジメさんはおじさんに返事をして、どんどん奥へ進んでいった。

 炊事場を過ぎ、テントベースも過ぎ、てっきりテント宿泊と思っていた私はびっくりして、ハジメさんに聞いた。

「ハジメさん? どこまで行くんですか? こっちじゃないんですか?」

「へへ。俺達は、あそこ」

 ハジメさんが指差す方向はログハウスエリア。

「えっ、ログハウスなんですか!」

「ウン。あの、まずかった…?」

 私の驚きの声に、ずっと前を向いたままだったハジメさんがやっと振り向いた。

 その顔は少し…不安そうだった。





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