呼吸を重ねて

13/62ページ

前へ 次へ


【おはようございます! 気持ちのいい秋空の週末を迎えられましたね、後藤樹深です。
 ○○さんのラジオを楽しみにされていたリスナーさん、申し訳ありません──】

「わっ? あれ? どうして?」

 土曜日。平日の朝だけのはずのタツミさんの声がラジオから流れて、私は飛び起きた。

 いつもはゆっくり起きる土曜日、でも今日は、いよいよハジメさんとお泊まりバーベキュー。

 大学に行くのと同じに起きなきゃだったのに、楽しみ過ぎてなかなか寝つけなくて、ラジオの前に起きられなかった。

 無意識にスマホに手を伸ばす。チカチカとメッセージの受信ランプが光っている。

 送信者は、イッサちゃん。昔、ハジメさんのお店でアルバイトをしていた、このラジオのタツミさんの彼女さん。

 夏のバーベキューの時にすごく良くしてもらって、今もちょくちょく連絡を取り合う仲。

 送信時間は明け方だった。何か急ぎだった?

【寝てるところを起こしちゃったらゴメンね!
 今日の朝6:00、土曜だけどタツミくんラジオやります。
 ピンチヒッターだって。お時間あったら聴いてみて。
 今日はハジメちゃんとお出かけ、楽しんでねぇ(≧∀≦)
 返信無用です!】

 このメッセージの後に、走り去る車と『いってらっしゃい』の文字のイラストのスタンプが添えられていた。

 無用、と書かれてしまったけれど、私はイッサちゃんにお返しのメッセージを送った。

【おはようイッサちゃん。メッセージありがとう。
 寝てて読んでなかったんだけど、タツミさんの声がラジオから流れて、ビックリして目覚めました(笑)
 イッサちゃんもマッサージのお仕事がんばってね】

 イッサちゃんには、今日のお出掛けがお泊まりである事を話していない…

 悩んだ末…

【実は今日、お泊まりです。いってきます】

 この文章を付け加えて、イッサちゃんに送信した。

 その数秒後、びっくり仰天のイラストスタンプと、ハートいっぱいの可愛いウサギのイラストスタンプと、『グッドラック!』と親指がグッと立てられたイラストスタンプが順番に送られてきた(笑)

 画面の向こう側で、イッサちゃんがドタバタしているのが容易に想像できて、自然に笑みがこぼれた。





13/62ページ
スキ