呼吸を重ねて

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「え、あ…あれ、私より、ハジメさんは? お店どうするんですか」

 てっきり日帰りだと思っていた。

 夏休みが終わってすぐにあった、剣道の大きな大会の優勝をお祝いしたいと、ずっと言っていたハジメさん。

 どこに行きたい? と聞かれて、夏の海でみんなとやったバーベキューが楽しかったから、

「またバーベキューがしたいです。ハジメさんと」

 と言った。

「そんなんでいいの?」

「はい。ハジメさんが全部焼いて下さい(笑)」

「(笑)(笑)」

 了解、と言ってハジメさんは色々と調整をかけてくれた。

 ハジメさんの定休日は木曜日。だから私がそれに合わせる気でいたのに、土日両方空けられたら空けといてと言われたのがつい先日。

「うん。居酒屋の方は、土曜だけ親父に頼んで開けてもらう。ラーメンの方はどっちも閉めとく。そうする為に、しばらく休み無しでやってきたから」

「あ…ふふ、そうなんですね」

 この2ヶ月ほど…ほとんど私とのお付き合いと並行してだけど、ハジメさんはひっきりなしに働いていた。

 お店から離れられないハジメさん。逢う時は、私が大学から帰る途中にお店に寄る。

 ラーメン屋さんが終わって居酒屋に変わるまでの約3時間、それが私達のデート時間。

 ひたすら話して…あっという間に時間が過ぎて…

 帰る時に、誰もいないお店の中でキスをする…触れるだけのキスを、何回も。

「気を付けて帰れよ?」

 私の肩に乗せていたハジメさんの両手が、私の腕を滑って、私の指先をキュッと握って、離した。

 甘い感覚の余韻に浸りながら、私はお店を出る。同時に、寂しさが襲う。



 もっと長く一緒にいられたらいいのにな。



 この我儘とも言える私の願いが、叶えられようとしていた。





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