呼吸を重ねて

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「もしもし? ホノちゃん?」

 ハジメさんからの電話。毎日、夜9時過ぎに掛かってくる。

 お昼はラーメン屋さん、夜は居酒屋になるハジメさんのお店。

 ほんの10分の休憩の間に、私に電話をしてくれる。

 メッセージのやりとりでいいのにと言うと、俺がホノちゃんの声聞きたいのと言う。

「もしもし。お疲れ様です、ハジメさん。今日も混んでますか?」

「んー、今日はそうでもない。昨日はなんであんなに激混みだったんだろ?(苦笑)」

「ふっ。昨日はあまり話せませんでしたね」

「んっ…ごめんな」

「? 怒ってないですよ?」

「そう?」

「そうですよ」

「なら、よかった」

「ふっ。へんなハジメさん」

「言ったな!?」

「ふふ…っ」

 こんなやりとりも心地いい。私も、ハジメさんの声を聞いていたい。受話口から耳ヘ、こそばゆく伝わる。

 何とはなしに会話して、

「そろそろ戻る時間ですよね? 閉店までがんばって下さい」

 と終わりにしようとしたら、

「あっ、ちょっと待って! 話したい事がある」

 ハジメさんに止められて、思わずベッドの上で姿勢を正した。

「はい」

「あのさ」

「はい」

「こないだ話した、週末空けといてってやつ。大丈夫そう?」

「はい。土曜も日曜も、ですよね? 大丈夫ですよ」

「よかった。
 あのさ」

「はい」

「あのね」

「(笑) はい」

「一泊…したいと思ってる。
 …ダメですか?」

 …すぐに返事が出なかった。





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