〈改稿版〉traverse

97/171ページ

前へ 次へ

 (★)

「…はぁ? キミなんかにも、ヤローがいるワケ…?
 ちっ…どいつもこいつも…」

 サナダの手がじっとりと汗ばんでいて、サナダの息が顔にかかって、気持ち悪い。

 サナダのぽってりした唇が近づいてきた。

 イヤ…!!

 私は咄嗟に顔を背けた。だけどサナダは執拗に追いかける。

 こんなヤツに奪われてたまるか。これは、元ちゃんにだけ許した大切な…

 サナダの気持ち悪い吐息が顔中にかかる、必死に逃げた末…私の唇の端っこを、サナダの唇が掠めた。

 サーッと血の気が引く。

 元ちゃん。元ちゃん。元ちゃん。心の中で連呼した。

 元ちゃんが助けに来れるわけがない、自分で何とかしなきゃいけない…元ちゃんへの想いをお守りにする。

 悔しい気持ちが強過ぎて、掠められた箇所を何度も擦った。

 それを見たサナダは、かっとなったのか、私の両手を拘束する力が更に強まって、サナダの唇がそのまま下へ降りて…鎖骨の下辺りでチュウッと鋭く吸った。

「いやあぁーー!!」

 イヤな痕をつけられただけじゃない、拘束を片手に任せて、もう片手で…私の胸を乱暴に揉み回した。

「ねぇ…マッサージしてもらった時から思ってたんだよ…キミさぁ…胸大きいよね…」

 やめて…元ちゃんにしかに触られたくない。





97/171ページ
スキ