〈改稿版〉traverse
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元ちゃんが組んだ通りにスポットを回った。
遊覧船に15分揺られて、島の裏側へ着くと、そこは潮が引いて現れた岩の平野。
視界全て、真っ青な海で埋め尽くされて、飲み込まれてしまいそう。
「勇実、危なっかしいなぁ、落っこちるなよ」
元ちゃんにそっと手を引かれる。
そのまま、奥の岩屋の洞窟に入って、外と中の温度差にビックリ。エアコンより涼しい。
奥の奥に龍神さまが祀られていて、なかなか厳かな雰囲気。なんとなく騒いじゃいけないと思い、入口で持たされた灯籠を掲げて、ひっそりと祈りを捧げた。
岩屋から島のてっぺんへの道のりは坂や階段の連続、ヒーヒー言いながら私と元ちゃんは登り続けた。
陽がゆっくりと沈んでいって、てっぺんに辿り着けた時は、空がオレンジに燃えていた。
ちょっと広場になっている所で、大道芸をやっていたので、しばらく見ていた。ジャグリングや、観客参加の空気椅子が面白かった。
そのパフォーマーが終わって、次の人が路上ミュージシャンだった。
ギターを掻き鳴らし、思いの丈を歌に乗せる。
「樹深くんの方が、上手いよなぁ」
元ちゃんがつぶやいて、私もそう思ったけれど、それを言ってしまっていいのか分からず、答えられなかった。
「行くか」
元ちゃんは私の頭をポンポンと軽く叩いて、人の輪からそっと外れた。
だんだんと暮れていく景色と反比例に、すぐそこのローソクみたいな展望台がボンヤリと灯りだす。
灯りに導かれるように、私達は展望台に向かった。
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