〈改稿版〉traverse
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「サナダ様、お待たせしました。こちらへどうぞ」
私の言葉にハッとして、慌てて雑誌を元の場所に戻すサナダ。
「勇実ちゃん、脚の方をお願いね」
「あ、はぁい」
私の腕が上達したと胸を張っていいのか、最近潤子さんは脚のマッサージを私に任せてくれる。
時々練習で元ちゃんにもやってあげてて、「はあぁ~っ、気持ちいいなぁ~」って、おじいちゃんキャラ炸裂(笑)
サナダは全身マッサージを希望していた。うつ伏せにさせて、背中を潤子さんが、脚を私が同時に揉んでいく。
「だーいぶ、お疲れみたいですねぇ」
潤子さんがサナダに話しかける。
「あっ…ハイ…歩き仕事なんでぇ…あぁ~っ、キモチイイですぅ…」
なんか…話し方もヤな感じにしか聞こえない…典ちゃんからの話で先入観があるせいか、ちょっとした事でも嫌悪感が募る。
もう、典ちゃんに近づかないでよ。カレと一緒の所を見て、やめてくれるといいんだけど。
ご満悦な様子で、サナダは帰っていった。
同時に遅番の子がやっと来て、私も上がりになった。
気分を切り替えて、明日は元ちゃんとめいっぱい楽しもう。まだ、どこに行くかの連絡が来ないけど。
と思ったら、仕事中に元ちゃんからのLINEが届いてた。お店を出て、LINEを開いてみる。
(明日、泳がねぇけど海行くぞ。
早起き出来るか? 電車乗って行こうな)
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