〈改稿版〉traverse
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学校のお盆休みのおかげで、毎週土曜日にしか勤務の重ならない典ちゃんともゆっくり話せた。
大学の夏休み真っ最中の典ちゃんは、土曜日の他に月水木にもシフトを入れていた。夏休みの最後の週にカレと旅行に行くとかで、懐を暖めておきたいみたい。
「典ちゃんとこは相変わらず、ラブラブですなぁ」
水曜日の勤務のランチで、そんな風に切り出してみる。
「ふふふ、勇実ちゃんとこだって、ねぇ?」
からかうつもりが、ふんわり笑顔で典ちゃんに返り討ちにされる私。
典ちゃんには粗方話してある。樹深くんにはヒミツにしなさいって言われたけど、女同士ならいいよね。
「それで? 明日、どこに行くか決まったの?」
「ううん。元ちゃんに任せてるけど、連絡来ないよ(笑)」
「ふふふ、楽しみだね。
……」
ん? 典ちゃん? なんか様子がヘン。
「勇実ちゃん、あのね…話が全然違っちゃうんだけど…ちょっと、聞いてもらえる…?」
典ちゃんの深刻な顔。
「うん…? どーしたの…?」
固唾を飲んで典ちゃんの言葉を待った。典ちゃんが周りを気にしながら、声を潜めて…告げた。
「私の勘違いかなって、最初は思ってたんだけど…
…ストーカーみたいな人がいて」
…