〈改稿版〉traverse

85/171ページ

前へ 次へ


 学校のお盆休みのおかげで、毎週土曜日にしか勤務の重ならない典ちゃんともゆっくり話せた。

 大学の夏休み真っ最中の典ちゃんは、土曜日の他に月水木にもシフトを入れていた。夏休みの最後の週にカレと旅行に行くとかで、懐を暖めておきたいみたい。

「典ちゃんとこは相変わらず、ラブラブですなぁ」

 水曜日の勤務のランチで、そんな風に切り出してみる。

「ふふふ、勇実ちゃんとこだって、ねぇ?」

 からかうつもりが、ふんわり笑顔で典ちゃんに返り討ちにされる私。

 典ちゃんには粗方話してある。樹深くんにはヒミツにしなさいって言われたけど、女同士ならいいよね。

「それで? 明日、どこに行くか決まったの?」

「ううん。元ちゃんに任せてるけど、連絡来ないよ(笑)」

「ふふふ、楽しみだね。
 ……」

 ん? 典ちゃん? なんか様子がヘン。

「勇実ちゃん、あのね…話が全然違っちゃうんだけど…ちょっと、聞いてもらえる…?」

 典ちゃんの深刻な顔。

「うん…? どーしたの…?」

 固唾を飲んで典ちゃんの言葉を待った。典ちゃんが周りを気にしながら、声を潜めて…告げた。

「私の勘違いかなって、最初は思ってたんだけど…
 …ストーカーみたいな人がいて」





85/171ページ
スキ